「P10プリメーラに大きな影響を与えたサンタナ」しかも最終限定モデルの“マイスターベルク”!!【ManiaxCars】

「P10プリメーラに大きな影響を与えたサンタナ」しかも最終限定モデルの“マイスターベルク”!!【ManiaxCars】

日産座間工場で生産されたドイツに本籍を持つ日本車

バツグンに高い直進安定性。アウトバーンの名に偽りナシ!

変態グルマ好きなら「おおっ、あったねぇそんなクルマ!」と強く思うこと必至の1台、日産VWサンタナ。もともと80年にドイツで登場、日本ではヤナセが扱ったりもしてたんだけど、日産がVWとライセンス契約を結んで84年から座間工場でのノックダウン生産がスタート。“日産”と“VW”という自動車メーカーのダブルネームを冠した、世にも奇妙な(!?)モデルが誕生したワケだ。

さらに突っ込んだ話をすると、VWサンタナはプラットフォームがアウディ80と共通で、ゆえに直4または直5エンジンを縦置き搭載したFFレイアウトを採用。上記ダブルネームに加えて、世界でも少数派なエンジン縦置きFFっていうパッケージングが、これまた変態グルマ好きの興味をソソるのだ。

取材車両は140ps仕様のVWJ型2.0L直5DOHCを搭載したトップグレード、Xi5アウトバーンDOHC(110ps仕様の2.0L直5SOHCを載せた素のXi5アウトバーンも存在するからややこしい。ドライブシャフトを通す関係からミッション位置が決まるため、エンジンは必然的にフロントアクスルより前に搭載されることになった。

エンジン縦置きによって前後方向のスペースがなくなったため、まずクランクシャフトを中心にシリンダーブロック&ヘッドが運転席側に傾けられ、その横にエンジンと並列でセットされることになったラジエター。後方に電動ファンが備わるけど、見るからに容量が小さく、オーバーヒートは持病のひとつだとか。

写真はエアクリーナーボックスだけど、至るところに日産、VW、アウディのマークが見て取れる。このクルマの生い立ちを表す証だ。

さらに! 恥ずかしながら自分もその存在を知らなかったんだけど、取材車両はモデル末期に300台限定で発売された『マイスターベルク』という特別仕様車なのだ。日産VWサンタナ自体、数年に1台お目にかかれるかどうかの希少車なのに、わずか300台の限定モデルを取材できるなんて、こんなシアワセがあって良いのだろうか? 神様&オーナー様、ありがとう!! 

今回快く取材に協力してくれたオーナーF氏にとって、このサンタナは2台目。当時「限定車だからぜひ乗り替えを!!」と怒涛の勢いで迫ってきた日産ディーラーの営業マンに押し切られるカタチで90年に購入したとか。以来、頻発するトラブル(ドライブシャフトが落ちたこともあるそうだ、汗)を克服しながら、1オーナーで23万km以上の距離を稼いでいるという、そういう意味でも実に貴重なクルマだ。

そして、いよいよ実車とご対面。ふむふむ、ジウジアーロがデザインしたと言われる直線基調のスタイリングはなかなかスマートでイイじゃないか。ルーフとかボンネットとか一部完全にクリア膜がはげて、色ボケしまくりなところも味があってたまらない。

真横から見ると全長に対してホイールベースが短く、オーバーハングが長く、今どきのクルマとは明らかに異なるディメンション。多くのひとはソレをカッコ悪いと思うかもしれないけど、デザイン的にどこか破綻してるクルマじゃないと興奮しない自分は、腰高感バリバリな車高と合わせて「これ以上“直球ド真ん中ストライク!!”なクルマがあるだろうか?」と思ったほどだ。

リヤクォーターウインドウに貼られた、限定モデルであることを物語る“マイスターベルク”のステッカー。色あせて、すでにドイツ国旗がドイツ国旗に見えないところが20数年の時を感じさせてくれる。

さらに、取材車両は当時ディーラーオプションだったコーナーポールとステンレス製サイドバイザーを装着。クルマだけでなく、こんなレアアイテムまで拝めてしまうなんてありがたや~。

マイスターベルクを含むXi5アウトバーン系は、14インチアルミホイールや専用セッティングの足回りを標準装備。タイヤサイズは195/60R14だ。

外装をナメるように見回したら、いよいよ乗り込む。座間工場生まれだけど、カチャリ…と金属質なタッチで開くドアは完全にドイツ車のソレ。インパネのデザインを含め、機能を優先させた質実剛健なイメージにあふれている。ダッシュボードは直線基調で割と味気ないけど、変態グルマ好きにはそれがササる(笑)。経年劣化によって割れた樹脂製パーツが取り外され、各部にオーナーの手が加えられるなど、1オーナーで20年以上乗り続けられていることがうかがえる。

センターコンソールのエアコン操作パネル。モードはプッシュボタン、風量はダイヤル、温度はレバーで調整する。また、右手前にチラッと見えるウインカーレバーは、標準装備されるオートクルーズの操作スイッチとしても機能。

ゆったりしたサイズのシート。座り心地は、張りがあって硬質というよりも、たっぷり厚みのあるクッションでカラダ全体を包み込むような感じだ。また、その生地はドアトリムなどと合わせてマイスターベルク専用品となる。

さて、シートポジションを合わせたらエンジン始動。どんな走りを見せてくれるのか、ワクワク。シフトレバーで1速を選んでそろそろ…とスタート。スクエアなデザインのおかげでボディ四隅の見切りがヒジョーに良く、エンジン縦置きFFの恩恵で想像以上に小回りも効くんで、日常域での使い勝手は素晴らしく良いはず。3000rpm手前で2速、3速とシフトアップ。4速1500rpmでもギクシャクするようなことはないから、基本的にエンジンはトルク型でとても扱いやすい。

が、本領を発揮するのはやはり高速走行。3速から6000rpmまで回してシフトアップしていくと、5000rpmあたりから5気筒特有の“ボロロロ…”という排気音をひときわ高めながら、ハイギヤードらしい息の長い加速を見せる。

ストロークは長めだけど、タッチはカッチリしている5速MT。シフトパターンの5速が“E”と表記されてるのはエコノミーということか? 5速でのエンジン回転数は100km/h時2400rpmと、当時の2.0LクラスNAの5速MT車としては明らかに高速巡航を重視したギヤリング。さらに、速度域が上がるほどに直進安定性も増していく。

それからブレーキ。ペダルタッチこそややスポンジーな印象だけど、初期でカクン…と効くようなことはなく、踏んだ分だけ確実にスピードを殺いでくれるからすこぶる安心だ。

30年以上も前に設計されたクルマなのに、まさかここまでビシッ!! と走るとは。“変態グルマ”のひとことで片付けたらバチがあたりそうな、日産VWサンタナXi5アウトバーンDOHCマイスターベルク(長げぇな…)。正直これまで、その実力を侮ってたことを悔い改めます。

■SPECIFICATIONS

車両型式:HM30JFD

全長×全幅×全高:4530×1690×1395mm

ホイールベース:2550mm

トレッド(F/R):1410/1420mm

車両重量:1180kg

エンジン型式:VWJ

エンジン形式:直5DOHC

ボア×ストローク:φ81.0×77.4mm

排気量:1994cc 圧縮比:10.0:1

最高出力:140ps/6400rpm

最大トルク:17.5kgm/4800rpm

トランスミッション:5速MT

サスペンション形式(F/R):ストラット/トレーリングアーム

ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク

タイヤサイズ:FR195/60R14

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)