WAKO’SとKeePerが7点差で最終戦へ。「ぶっちりぎじゃん」「今年終わった」揺れるレース中の感情と困惑の雨《GT500決勝あと読み》

 KeePer TOM’S LC500は28周目、WAKO’S 4CR LC500は翌29周目にピットインと同じような戦略で決勝レースを戦った、GT500のチャンピオンシップを争うランキング上位2台。しかし、ピットイン後の展開は2台で分かれることになった。WAKO’S山下健太とKeePer平川亮、雨が強まった第2スティントを担当したそれぞのドライバーたちのコメントとともにレースのポイントを振り返る。

 ニック・キャシディから平川亮に乗り変わった37号車KeePerは、ピットインでは給油のみでスタートで履いたレインタイヤはそのまま。雨のレースではタイヤのウォームアップが重要になるだけに、アウトラップでの大きなタイムロスを防ぐことができる。その反面、レース後半でのタイヤの摩耗は厳しくなる。

「ピットインでタイヤを替えなかったのは、スタートで硬いレインタイヤを履いていたので、レインで一番硬いタイヤだったので雨がこれ以上強くならないと予想しつつ、第1スティントでタイヤがタレていなかったので行けるだろうと。このSUGOはレインタイヤはタイヤの落ちも少ないので、そのあたりは考慮していったんですけど、やっぱり雨が強くなってくると結構、しんどかったですね(苦笑)」と話すのはKeePer平川。

 平川はピットアウト後、雨量の少ないなかで好タイムを連発。一方、トップのRAYBRIG NSX-GTは4本タイヤを交換してアウトラップでウォームアップに手間取るところを平川が追いつき、38周目のハイポイントでインに入りオーバーテイク。これでKeePerは実質トップに立った。

 しかし、その直後、12号車カルソニック IMPUL GT-Rが2コーナーで飛び出してグラベルにスタックしたところでセーフティカーが入り、44周目にリスタートしてからは序々に雨が強くなり、KeePerはペースが苦しくなる。

「セーフティカーが入るくらいの時から雨が強くなってきて、セーフティカー明けはペースはよかったんですけど、そこからさらに雨が降ってきて、さすがに一番硬いレインだとしんどくなってきて、『しまった!』と思いました」と、その状況を振り返る平川。

 だが、タイトルを争っている6号車のWAKO’Sの山下健太も、厳しい状況は同じだった。

「自分が出て行ってすぐはコンディションにタイヤが合っていて、ハイペースでいいところまで行けるなと思っていたんですけど、そのあと、どんどん雨が強くなるに伴ってグリップが薄くなってきて、全然、まともに走っていられないくらいになってしまいました。チームには無線で『もうヤバイです』、『普通に乗れないです』、『これはちょっと無理っす』と言って、ピットに入りました」と山下。

 44周目には3番手まで順位を上げたWAKO’S山下だったが、47周目には6番手まで順位を下げてしまう。ここでチームは決断した。48周目にピットインして、それまで装着していたハード目のレインタイヤから、ソフトのレインタイヤに交換したのだ。ピットインで一時的に9番手まで順位を下げたWAKO’Sは、そこからソフトのレインタイヤでペースを挽回していくか、と思われたが、実際にはそれほど大きくタイムが上がらない。山下は焦った。

「レインのソフトに履き替えて感触は良くなったんですけど、それでもまだグリップは低くて。毎周、1コーナーの掲示板で37号車のタイムを見ていたんですよ。そこで『あれ!? タイム変わらないじゃん!』って思って。『これはマズイ』、『今年はもう終わっちゃったかな』と思いました」と、素直な心境を話す山下。

 一方の平川は、雨が強くなってタイヤと路面コンディションが合わなくなってきている状況ながら、冷静に状況を見ていた。

■タイヤを交換後もタイムが思ったように上がらなかったWAKO’S山下健太「ダメだなこりゃ。今年終わったな」逆境からのオーバーテイク

スーパーGT第7戦SUGO決勝
ランキングトップのWAKO’S 4CR LC500は2ピット作戦を選択して終盤に追い上げ6位に。7点リードで最終戦に向かう

「しんどかったですけど、それでも周りのラップタイムを聞いて、全然問題ない、タイヤを替える必要はないと思っていました」と平川。

 山下も9番手からレース終盤に向けて序々に順位を上げ、74周目には同じレクサス勢でタイトルを争っている39号車DENSO KOBELCO SARD LC500をオーバーテイクすることができた。

「なかなか抜きどころがなくて、39号車も結構、苦労している感じだったんですけど、自分も結構、フラフラで。お互いフラフラになっているなかで39号車がミスをして『ここしかない』と抜きに行きました。まともに普通に走っていたら抜けなかったと思いますけど、少ないチャンスを活かせて良かったです」と山下。

 結局、WAKO’Sは6位フィニッシュ。KeePerも4位を守り、タイトルを争う2台は7ポイント差で最終戦を迎えることになった。今回の冷たい雨のコンディションでは、一度ピットインしてタイヤを履き替えたマシンはタイヤのウォームアップに苦しみ、GT300などトラフィックでペースと一度落としたマシンはタイヤが冷えてしまい、回復が難しくなるという、非常にドライバー泣かせのコンディションになった。

 そのなかでも、平川は最後までプッシュしつづけタイヤの温まりを保ち、ブリヂストン勢では唯一、タイヤを替えずに上位フィニッシュを果たした。タイヤを交換したブリヂストンユーザーがラップタイムを上げられず軒並み順位を下げていくなか、ライバルチーム、そしてライバルメーカーからも、前回のオートポリスと合わせて、平川の走りを称賛する声を聞く。山下とともに、最後まで諦めずにプッシュし続けたドライバーにタイトル獲得への扉は開かれる形となったのだ。

 最終戦での最大獲得ポイントは21ポイント。ランキング3位となったMOTUL AUTECH GT-RはトップのWAKO’Sと20.5ポイントのため、実質、今年のタイトルはWAKO’SとKeePerの一騎打ちになった。

「今日はこれ以上の結果はなかったですし、他のタイヤメーカー、ミシュランとダンロップが速かったですし、そのなかでブリヂストンの一番前でゴールできたので、そこはよかったと思います。6号車の結果はしょうがないですけど、6号車もしぶといですよね」とレース後に振り返るKeePer平川。

「ホッとしました。1回ペースが上がらなくてピットに入って出て行った時には37号車とペースが変わらなくて『ダメだなこりゃ。今年終わったな』と思ったんですけど、最後まで頑張って走って良かったです」と振り返るのはWAKO’S山下。

「改めて、37号車は強いな、速いなと思いましたし、しぶといですよね。それでも自分たちも『ヤバイな』という状況から何とかここまで巻き返せたので逆に自信にもなったし、今回3ポイントしか縮まっていないことを考えると、ちょっとだけ余裕を持ってもてぎに行けるのは本当に良かった。ただ、最後まで気を抜かずにいないとたぶん、37号車に行かれちゃうのは間違いないので、最後まで気を緩めず、いつもどおりやりたいと思います」と、山下は最終戦に向けての抱負を語った。

 平川も「トップに立ったときは後ろがどんどん離れていったので『ぶっちぎりじゃん!』って(笑)。でも、おかしいなと思って、そんなはずはないと。最後の方はタイヤが摩耗したのか全然グリップしなくて、GT300と同じようなペースで走っていました。今日のこのコンディションの流れを考えるとベストを尽くせたと思うんですけど、6号者とあまりポイント差が縮まらなかったので悔しいですよね。7ポイント差は大きいですけど、まだまだわからない。まずは僕らが最終戦をきちんと戦っての結果になるので、まずはそこに集中したいと思います。自信はあります」と平川。

 最後に笑うのはどっちか。レクサス陣営による今年のGT500のタイトル争いは、WAKO’SとKeePer、7ポイント差の一騎打ち状態で最終局面を迎える。