角田裕毅がFIA-F3イタリアの初優勝を振り返る:「マルコ博士から『おめでとう』と言われたあとはずっとダメ出しでした(笑)」

 FIA-F3選手権に今季から参戦する角田裕毅選手(イェンツァー)が、第7戦イタリア・モンツァのレース2で初優勝を果たした。イエンツァーレーシングという戦闘力に劣るチームに所属していることもあって、シーズン当初はなかなか入賞もできず。それでも少しずつ頭角を現し、第6戦ベルギーで初表彰台。

 そして今回のレースでは、ウエット路面から急速に乾いていく難しいコンディションの中、ライバルたちに果敢にオーバーテイクを仕掛け、首位に立ってからはノーミスの走りで勝利のチェッカーを受けた。

――非常に難しいコンディションのレースでしたが、素晴らしい走りに終始しました。
角田裕毅選手(以下、角田):
ありがとうございます。特にスタートが良かったです。あれが今回の優勝の一番大きな要因のひとつかもしれません。

 今回のようなウエットから乾いていくコンディションだと、特にモンツァでは本当に抜くのが難しいので、スタートでひとつでも順位を上げようと思っていました。それが思い通りにできて、よかったです。

FIA-F3第7戦イタリアで優勝を果たした角田裕毅選手(イェンツァー・モータースポーツ)
FIA-F3第7戦イタリアで優勝を果たした角田裕毅選手(イェンツァー・モータースポーツ)

――乾きかけている状態では、1コーナーのフルブレーキングは特に微妙だったと思いますが、そこもまったくノーミスでした。
角田:
ブレーキはもともと得意だったんですけど、このレースでは自信持って踏めました。それがよかったと思います。

 路面が乾いていくのはわかっていたので、タイヤをあまりプッシュしないように心がけていたんです。(ジェイク)ヒューズとも少し離れていたので、タイヤの様子を見ながら走るようにしました。

 クルマの仕上がりもほんとに良かったので、そこもタイヤに無理な負荷をかけずにすみました。

FIA-F3第7戦イタリア レース2
FIA-F3第7戦イタリア レース2

――ヒューズを追っていた序盤、1コーナーで仕掛けた際にフロントウイングを踏まれていました。目立つダメージは、なかったですか?
角田:
踏まれたというか、僕のターンインが少し速すぎました。決して、ヒューズのせいじゃないです。ただあの時は、フロントウイングが終わったと思いました(笑)。でもその後のブレーキングもいつも通りだったんで、大丈夫だなと安心しました。

――2周目の1コーナーでヒューズを抜こうとした際、向こうがずっとイン側を抑えて抜くことができなかった。
角田:
あそこは、さすがだなと思いました。彼は経験豊富で、ああいうところがうまいなと。コーナーでの攻防は、とても勉強になりました。2位のリアム(・ローソン/MPモータースポーツ)を抜いた時とは全然違っていて、やっぱりヒューズはうまいなと思いました。(ヒューズを)抜く時は、本当にワンチャンスしかなかったんです。

――その後、どんどん路面が乾いていって、タイヤマネージメントはかなり大変だったと思います。
角田:
そうですね。ハーフウエットでの走りがどれだけのレベルなのか、自分でも正直よくわからないのですが、途中からリアムが追い上げてきて、彼の方が明らかにペースが良かった。それでバックミラーでラインなどを観察していました。なるほど、こう走っているのかというのがわかってきて、それを参考に途中から僕も走り方を変えたりしました。それである程度、離すこともできた。その意味でも、勉強になったレースでした。

――これだけ長い距離を、ハーフウエット状態で走った経験は、これまでになかったのでは?
角田:
いえ、FIA-F4時代の去年、菅生(スポーツランドSUGO)で同じようなコンディションで走ったことがあります。その時は最初にプッシュし過ぎて、タイヤがすぐに終わってしまい、名取鉄平選手(カーリン・バズレーシング)や川合考汰選手に抜かれてしまった。

 あの時はとにかくタイヤのサイドを使い過ぎて、ドライコンディションと同じように、コーナリング重視の走り方だったんですね。ああいう時はV字ラインを取るべきなのに、それができていなくて、すぐにタイヤが終わってしまった。その教訓を今回活かすことができたと思います。

――終盤は自己ベストを毎周のように更新していましたが、あの時もタイヤは相当厳しかった?
角田:
いえ、あの時はそうでもなかったです。

――勝てると思ったのは、その辺りですか?
角田:
後続が徐々に離れていって、そこを狙ってさらにプッシュした辺りですね。

――ただ残り5周くらいでは、ペースがかなり落ちかけていました。
角田:
その時ですね、リアムの走りを見て勉強させてもらったのは。そこで2、3周走っているうちに、離すことができました。

――早く終わってくれとは、思わなかった?
角田:
もちろん、思いましたよ(笑)。僕がトップに立ってからもまだ7周くらいあって、「うわ、最悪」って(笑)。でも、落ち着いて走ろうと思いました。

――途中でドライタイヤへの交換は、まったく考えていなかった?
角田:
その辺りは、エンジニアに任せていました。

――無線のやり取りで、「黙れ!」って、叫んでいました?
角田:
ああ(苦笑)。ブレーキバランスを前にしろって言われて、「そんなのわかってる!」というつもりでした。

――集中したかったわけですね。この初勝利は、ご自身の中ではようやくという感じですか。それとも、この状況でよくやったという思いの方が強いですか?
角田:
トップ5に入るまでに、けっこう時間がかかってしまいましたね。そこが今年の大きな反省点です。

――とはいえライバルたちに比べると、かなり戦闘力の劣るチームでのスタートでした。
角田:それはそうなんですが、ここまで底上げができたのはエンジニアが一生懸命やってくれたからですし、僕自身クルマの開発、クルマを速くしていくことを今年の課題のひとつにしてきたなかで、少しは技術的なフィードバックもできたかなと。

 そうだとしたら、うれしいですね。開幕戦のバルセロナ当時に比べると、だいぶクルマの速さは増してると思うので。ピレリタイヤをどう温めるか、どう持たせるかも、習得できていますしね。

――ヘルムート・マルコ博士からは、前回のベルギーでの表彰台で何か言われました?
角田:
「おめでとう」とひとこと言われた後は、「あそこはなぜ、こうしたんだ」など、ずっとダメ出しでした(笑)。そうやっていろいろと指摘してくれるのは、単純に褒められるより、ずっとありがたいです。

――最終ラウンド、第8戦ロシア戦を残すのみになってしまいました。
角田:
そうですね。あっという間でした。でも本当にたくさんのことを学んだし、チームといっしょにレベルの底上げもできています。最終戦もぜひ、表彰台争いをしたいです。

角田裕毅選手(イェンツァー)
角田裕毅選手(イェンツァー)