新型ニッサン スカイライン試乗。伝統のスポーツセダンにこめられた“技術の日産”の意地

新型ニッサン スカイライン試乗。伝統のスポーツセダンにこめられた“技術の日産”の意地

NISSAN SKYLINE

ニッサン スカイライン

ニッサンの歴史を築いたスカイラインが新たなステージに

13代目スカイラインに、ビッグマイナーチェンジが施された。そのポイントは大きくふたつ。ひとつはスポーツセダンとしての正常進化と、その市場における存在意義。そしてもうひとつは“手放し運転”がやや先走る気がする、話題の先進安全技術についてである。

先に種明かしをしてしまうとこの新型スカイライン、アーキテクチャーは先代V37型からのキャリーオーバー。エンジンこそ北米インフィニティ仕様のツインターボが導入されたものの、シャシー面で抜本的に刷新された部分はない。ただし見所はいくつもあると私は感じた。

 

NISSAN SKYLINE GT Type P[V6 TURBO]

ニッサン スカイライン GT タイプP[V6ターボ]

洗練さが際立つ3.0リッターV6ツインターボ

当日はまずターボモデル(GT Type P)を試乗し、そのあとにニッサンが真打ちと定めるハイブリッド(GT Type SP)を試した。ターボモデルの決め手は、なんといってもバリュー感の高さだろう。ベースモデルながらそのエンジンは従来の2.0リッター直列4気筒ターボが廃止され、3.0リッターV6のツインターボとなった。そして価格は約420万円からと、デフレ日本で絶対的価格の高さはあるものの、ライバルたちとの相対比では往年の“国産車”を感じさせる、嬉しいプライスが掲げられた。

そんなスカイライン、ベースモデルの走りはどうなっているのか? 褒めたばかりのエンジンだが、これは好みが分かれるかもしれない。“スカG”のスポーティなイメージや、突き抜ける爽快感を求める向きには一見物足りなさを感じるユニットだからだ。

しかし、これを丹念に精査すれば、極めてフラットなトルク特性にはツインターボ本来の目的を感じ取ることができる。大排気量NAエンジンのごとき扱いやすさは、国内初となる水冷式インタークーラーを備えたからこその洗練だろう。電動VVTや新開発のターボシステムによって紡ぎ出される300psのパワーを余さず使い切ることができる。

そしてこの出力特性がシャシーと組み合わさると、スカイラインは絶妙なハーモニーを醸しだす。すっきりとした軽快なハンドリング。これを後押しするように、リニアに立ち上がるエンジントルク。試乗車のステアリングにパドルがなかったのは非常に残念だったが、搭載される8速ATは機械まかせでも変速タイミングが自然で、無粋な断続感がほとんど感じられない。やや不良ッ気の足りないエンジンは、だからこそアクセルを踏み込める余地があり、ここに往年のGTSやGTS-tの血筋を感じた。

奇をてらわないハンドリングは好印象

唯一残念だったのはいわゆるタウンスピード領域でバネ下のまとまり感が低いこと。そして操舵初期に不感帯があることだ。標準装着される18インチのランフラットタイヤはかなり快適性を上げてきているのだが、まだ通常のタイヤに比べ若干の突き上げ感と重たさを感じる。そこに加えスカイラインはフライ・バイ・ワイヤのステアリングシステムを搭載するため、路面からのインフォメーションがスポイルされてしまうのだと思う。

開発陣としてもこのタイヤの突き上げ感を柔らげるべく、サスペンション剛性を闇雲に上げず、ダンパーの初期減衰力を落としているようだ。ただ、これによってさらに初期操舵に対するインフォメーションは不足気味になってしまう傾向が見られた。ホットモデル「400R」にしか搭載されない可変ダンパー(IDS:インテリジェント・ダイナミック・サスペンション)があれば、もう少し雑味は消せるのかもしれない。

しかし、この特性を踏まえた上でブレーキングなどでフロント荷重を少し高め、旋回方向へGを移動させると、新型スカイラインは軽快感のあるコーナリングを披露する。リヤタイヤの踏ん張り方にも大げさなところがなく、ジャストなバランス。乗り手を圧倒する剛性感こそないが、奇をてらわないそのハンドリングは筆者にとって一番気持ち良いスカGだった時代、R32をカジュアルに思い起こさせた。

 

NISSAN SKYLINE GT TypeSP[HYBRID]

ニッサン スカイライン GT タイプSP[ハイブリッド]

世界初の先進運転支援技術「プロパイロット2.0」搭載

さて、真打ちとなるハイブリッドモデルだが、これは実に見所の多い1台だった。真っ先に言わねばならぬのはそう、YAZAWA的“手放し運転”についてだろう。これはニッサンのADAS技術である「プロパイロット2.0」によって実現される。

システム的にはトライカム(三眼式カメラ)を含む7つのカメラ、5つのレーダー、12個のソナーに加え、ナビゲーションシステムと連動することによってACCを機能させる。ゼンリンが開発した3D高精度地図データを活用して、カメラやレーダーでは捕らえきれないロードマップ情報を先読みすることが可能となり、操舵支援に正確性をもたらすのだという。ついにここまできたかと思った。

車両側から車線変更の提案もなされる

ACCをアクティブに。+10km/hの許容はあるようだが、定められた速度に準じて走っていると、ハンドルを持った緑のデジタル表示から手が消えて表示が青くなる。こうなるとハンズオフが許された証だ。

それは、思わず笑顔になる新鮮さだった。スカイラインは自ら前車との感覚を調整し、緩いカーブでハンドルを切り、極めてジェントルにオートパイロットをこなす。前方との距離が詰まり、追い越し車線が空いていたとき。スカイライン側から車線変更の提案が呼びかけられ、スイッチを押すと車線変更を開始。このときはさすがに手を添えなければならないが、クルマ側から問いかけられるのも新鮮だった。

これまでもハンドルに軽く手を添えこそすれ、これにほぼ近い感覚でアダプティブ・クルーズ・コントロールを体験していた筆者だが、やはりハンドルをまったく持たない運転(?)とこれとでは、その体感がまるで違う。

ロボタイズとは思えぬほど滑らかなハンドルさばき

制御を先鋭化した操舵支援は、スカイラインを車線中央で真っ直ぐに走らせる。正確に言うとシステム自体の出来映えに加え、ダイレクト・アダプティブ・ステアリング(DAS)が大きく影響している。DASは方向を示す要素としてカーブに伴いステアリングを動かしながらも、タイヤ及びラックのこまかな動きはステアリングシャフトで遮断する。路面のアンジュレーションでもステアリングは小刻みに動かないから、視覚的にも不快な要素が減るのだ。

フライ・バイ・ワイヤによるステアリングさばきは、ロボタイズとは思えないほど滑らか。実際の走行環境では頑なに法定速度を守る走りが、この感覚になれていくとゆっくり走ることの贅沢さがわかるようになる。

ただ、このDASがあるゆえに実際の初期操舵レスポンスが鈍くなっているとも思える。だからこそ通常運転のときはシャフトのクラッチをつなげるなど、よりダイレクト感を高める措置を検討して欲しい。それでこそ“走りのスカイライン”だ。

完全自動運転へと至るマイルストーン

あまりの穏やかな時間の流れに、隣に座るカメラマン氏との会話が弾む。思わずよそ見をすると、スカイラインから叱られた。ダッシュボード上にある監視カメラはドライバーの運転姿勢と表情(いねむり防止用)をモニタリングし、注意を喚起するのだ。つまりハンズオフとはいえ、その範疇は自動運転レベル2の範囲内にある。ドライバーには運行責任者として、これを監視する義務が生じる。

メーター中央にアラートが現れる。これをキャンセルするにはステアリングを握り直す必要がある。スカイラインはステアリングに触れるだけでドライバーの操縦を認知できる機能を持っているが、アラート発生時は若干のトルクを与えて、より明確に運転復帰の意思を伝える必要がある。

今回は試乗路が単調なハイウェイだった。まだ首都高速道路といった複雑なカーブと合流を持つ領域でハンズオフ機能は作動できない状況だというが、不測の事態にドライバーが対応できない状況でこれを使用するのは筆者も賛成できない。実際に法定速度を頑なに守る運転は交通の流れを遮断する場合も多く、これを流れの激しい道路で使う気持ちにもなれない。

ここでレベル3の議論を展開する気はないが「自動運転専用道路」でもできない限り、どれだけ技術を発達させても今はまだドライバーの運行管理義務を放棄する時期ではない。だからこそ現状は、これでよい。ドライバーの監視義務という安全装置を頑なに守ったまま、その技術を発達させて行くのが当面のスタイルとなるだろう。仮に完全自動運転が可能な技術力を達成したとしても「レベル3」に突入することはなく、「レベル2.9」のままである。

ハイブリッドならではのレスポンスと安定感

クルマ本来の出来栄えに関しても、ハイブリッドは優秀だった。モーター搭載による前後重量配分のバランスがよいのだろうか、曲がり始めからロールが落ち着くまでの動きは、ガソリンモデルより安定感が高い。またアクセル開度に対するレスポンスも素早く、これをフラットアウトすると気持ち良く“スカーン”と吹け上がる。

モーターがアシストを意識させないほど自然に初期トルクを立ち上げ、3.5リッターの排気量を持つV6自然吸気ユニットが気持ち良く吹け上がるからだ。VQ35HRといえば歴史のあるエンジンだが、古さを感じるどころかモーターアシストを得たことで、その良さが引き立てられていることにも感心させられた。

シャシー剛性には取り立てて凄みは感じない。むしろ古い方だとは思うが、そこに不足を感じさせないのは素晴らしい。ちなみにこの旧世代プラットフォームは「プロパイロット2.0」を見越して作られたものではなく、その複雑な電気配線を搭載するために多くの労力を要したという。

新たな価値を技術で創造したニッサンの看板モデル

それでもニッサンがスカイラインに「プロパイロット2.0」を搭載したのは、このクルマが彼らのアイデンティティに他ならないからだ。マーケティング的には売れ筋のSUVへ真っ先に搭載して話題をさらうべきかに思えるが、そうしなかったところにニッサンの意地を感じた。ちなみにこの「プロパイロット2.0」は、現状ハイブリッドモデルにしか搭載されない。技術的にはガソリンエンジンモデルにも搭載が可能だが、それは今後の市場要求を見てからになるとのことだ。

そして今回は試乗できなかったが、VR30DDTTユニットを405psにまで高めた「400R」も、既にその受注が全体の24%にまで達しているという。かつその年齢層は、30〜40代と非常に若い。しかも、プリンス系ディーラーからの注文が多いというから嬉しくなる。この現象を冷静に見つめれば、GT-Rの潜在ユーザーが400Rを購入していると考えられる。また「中古のGT-Rを買うようなら新車の400Rを」という選択も十二分に考えられる。

しかし、何よりこれはセダン離れといわれる市場がスカイラインを求めたと捉えたい。7月19日から受注を開始して約1ヵ月経った時点で1500台以上の受注は、セダン市場の中にあって好調とのこと。これでセダンが復権するほど日本市場は甘くないだろうが、だとしたらスカイラインだけでも一人勝ちして生き残って欲しい。その走りには、欧州セダンにも負けない魅力があるからだ。

ニッポンには、まだスカイラインがある。そう思わされる試乗だった。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

ニッサン スカイライン GT タイプSP[ハイブリッド] 2WD

ボディサイズ:全長4810 全幅1820 全高1440mm

ホイールベース:2850mm

トレッド:前1535 後1560mm

車両重量:1840kg

エンジン:V型6気筒DOHC

総排気量:3498cc

ボア×ストローク:95.5×81.4mm

最高出力:225kW(306ps)/6800rpm

最大トルク:350Nm/5000rpm

圧縮比:10.6

トランスミッション:7速ハイブリッドトランスミッション

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前後245/40RF19

【車両本体価格(消費税8%込)】

スカイライン GT タイプSP(ハイブリッド)2WD:604万8000円

スカイライン GT タイプP(V6ターボ)2WD:455万4360円

【問い合わせ】

日産自動車お客さま相談室

TEL 0120-315-232