【自動車用語辞典:パワートレイン制御「概説」】燃費向上と排出ガス低減を目指すエンジン&トランスミッションの制御

■急速に進化したパワートレインの制御技術

●シミュレーションを活用して開発時間の短縮が可能に

この数十年間のクルマの技術革新には、ハードの開発とともに高精度のソフト(制御)の開発が大きく貢献しています。特にパワートレインの制御技術は、燃費規制と排出ガス規制の強化に対応するため、急速に進化してきました。

エンジンの性能や燃費、排出ガスを最適化するパワートレインの制御技術について、解説していきます。

●ガソリンエンジン制御

ガソリンエンジンでは、出力向上と燃費低減、排出ガス低減を実現するため、運転条件に応じてエンジン制御パラメーターを最適制御します。制御パラメーターとは、エンジンに供給される吸入空気量やエンジンに供給される燃料噴射量、点火時期、EGR量などです。

そのためには、エンジンの運転状態、例えばエンジン回転数やアクセル開度、吸入空気量、空燃比などの情報をリアルタイムで検出する必要があります。これらの情報から、ECU(エンジンコントロールユニット)が制御パラメーターの最適値を演算して、エンジンを制御します。

ガソリンエンジンの制御には、吸入空気量を制御する電子スロットル制御や燃料噴射量と噴射時期を制御する燃料噴射制御、点火時期制御、EGR制御などがあり、エンジン制御とはそれらすべてを含めた総称です。

●ディーゼルエンジン制御

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンとは使用燃料と燃焼方式が異なります。ガソリンエンジンは火花点火燃焼、ディーゼルエンジンは高圧噴射した軽油が自着火する圧縮自着火燃焼です。

ディーゼルエンジンには点火プラグがない代わりに、燃焼特性を制御するコモンレールと呼ばれる高圧燃料噴射システムが使われます。また排出ガス規制が厳しいため、排ガス低減のためのDPFや複数の触媒が搭載されます。

ディーゼルエンジンの制御は、ガソリンエンジンと似通った制御もありますが、異なる制御が採用されています。高圧で多段(複数回)噴射して燃焼を制御するコモンレール噴射制御、吸気量とEGR量を同時に制御するEGR制御、排ガス浄化のためのDPFや複数の触媒を制御する後処理制御などは、ディーゼルエンジン特有の制御技術です。

ガソリンとディーゼルの制御概要図
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは構造や燃料の特徴などにより制御項目が異なる

●トランスミッション制御

トランスミッションの役割は、エンジンの発生するトルクと回転数を走行条件に応じて増減(変速)して、適切な出力をタイヤに伝達することです。制御の狙いは、適切な変速によって走行に必要十分なトルクを発生させながら、同時に燃費低減と排出ガス低減を両立させることです。

手動で変速するMTには、特別な変速制御は必要ありません。一方、自動トランスミッションのステップAT、CVT、DCTなどは、スムーズな変速を実現する制御と最適な変速比を選択する制御が組み込まれています。

トランスミッションECUは、車速やアクセルペダルの踏み込み量を基本に、エンジンECUと連携を取りながら、エンジンとの統合制御が行われます。


どんなに優れた技術も制御が適正でないと、十分な真価が発揮できず、信頼性も確保できません。

かつての制御開発には、ハードの開発と同等かそれ以上の時間と工数がかかっていました。最近は、シミュレーションを活用したモデルベース開発(MBD)が主流となり、大幅な制御開発時間の短縮が可能になりました。

本章では、パワートレイン(エンジン、トランスミッション)の制御について、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)