FIA、複数台が絡んだユベールの事故に関する調査を開始。ベルギーの関係当局とも協力

 モータースポーツを完全に安全な状態で行えることはないだろう。しかし、F2ドライバーのアントワーヌ・ユベール(BWTアーデン)の死亡に繋がったスパでの悲劇的な事故は、このスポーツが常にさらなる安全性を追求していかなければならないという事実を浮かび上がらせる。

 FIAは、すべてのモータースポーツにおけるあらゆる重大インシデントの場合と同様に、この事故を十分かつ完全に解明するための調査を開始している。

 FIAレースディレクターのマイケル・マシは、今回の事故を受けた総合的な安全性向上のための調査手続きについて、「我々の側としては、土曜日の事故直後に調査を立ち上げており、今後進めていく予定だ」と語った。

「FIAの技術、安全性、その他関係するすべての部門が即座に調査を開始している。FIAとRACB(ロイヤル・オートモービル・クラブ・オブ・ベルギー)が、関係当局とも協働しながら調査を進める。我々としてはここを出発点とする」

 複数のマシンが巻き込まれた大規模クラッシュは、FIA-F2第9戦スパ・フランコルシャンのレース1で発生した。2周目の途中、時速270kmの高速で坂を上るオー・ルージュからラディオンにかけての連続コーナーを抜けて、ケメル・ストレートに入る地点だった。

 ジュリアーノ・アレジ(トライデント)のマシンがスピンし、これを避けようとしたユベールはラディオンのウォールに激突。その勢いでコース上へ跳ね返ってきたが、そこにファン・マヌエル・コレア(ザウバー・ジュニアチーム)が突っ込んでしまった。

 安全性への懸念が噂されてきたこのセクションで実際に悲劇が発生し、コース全体を不安が覆った。事故は8月31日(土)の現地時間午後5時7分に発生し、ユベールはコースのメディカルセンターに運び込まれたが、午後6時35分に死亡した。

 コレアも、両足の複数個所に骨折と、軽度の脊椎損傷を負った。コレアが所属するザウバー・ジュニアチームは、コレアがリエージュの病院に搬送されて集中治療室に入っているものの、容体は安定しているとの声明を発表した。

 今回の事故でレースファンと各チームの関係者たちがどちらも強い衝撃を受けた理由のひとつは、レース中のドライバー死亡事故が最近あまり発生しなくなっていたからだと言える。

 FIA公認のトップレベルの国際レースにおいて、レース中の事故で死亡した最後のドライバーはジュール・ビアンキだ。2014年10月に行われたF1第15戦日本GP決勝レース中に起きたクラッシュで頭部に重傷を負い、翌年7月に亡くなった。なおF1のレースウイーク中に複数のドライバーが死亡した最後のケースは、1994年F1サンマリノGPにおけるローランド・ラッツェンバーガーとアイルトン・セナとなっている。

 ルノーのダニエル・リカルドは、「時間が経つにつれて、いろいろなことを忘れがちになる」と語った。

「ジュールの事故からすでに何年も経過した。時間が経つと、安全性への意識も変化する。あれは昔のことだから大丈夫、と思ってしまうんだ」

「そして再び事故が起きてようやく、まだ危険はそこにある、ということを思い知らされる。そうすると、自分のなかで『今自分が追い求めているものには、自分のすべてを賭けるだけの価値があるだろうか?』という疑問が湧いてくる」

「でもマシンに乗り込むと、価値はあると思えてくる。今自分たちがすべきことはこれだ、と感じるんだ。だから、今日(決勝レースの日)は事故直後だし楽しめたとは言えないけれど、コースに出て競い合うことについて、実際にこれで良いと思う気持ちもあった」

 レース1での事故を受けて、9月1日(日)予定されていたF2のレース2は中止となった。また、F3とF1の各レース前に、ユベールをしのんで1分間の黙とうが行われた。