ハーレーダビッドソン初の電動バイク“LiveWire”が見せたリアル【海外試乗記】

ハーレーダビッドソン初の電動バイク“LiveWire”が見せたリアル【海外試乗記】

HARLEY-DAVIDSON LiveWire

ハーレーダビッドソン LiveWire

まったく違う乗り物、でも楽しさはバイクそのものだ!

ハーレーダビッドソン初の電動バイク「LliveWire」のメディア向け国際試乗会が米国・ポートランドで開催された。日本から参加した2輪ジャーナリスト、ケニー佐川がレポートする。

ハーレーダビッドソンLiveWire_サイドビュー3

未来の2輪市場の覇権をかけて

今回試乗したLiveWireは2019年秋から米国で発売される公道用モデルであり、おそらくは大手二輪メーカーとしては初となるスポーツタイプの量産市販電動車である。ハーレーと言えば、伝統的な大排気量Vツインエンジンを搭載する、いわゆるアメリカンクルーザーの代名詞と言えるブランドだ。

そのハーレーが先陣を切って電動バイクを投入してきたことに驚きを隠せない。しかも、それは既存モデルに電動モーターを積み替えたような安易な代物ではなく、まるでハーレーとは別の乗り物だったのだ。

ハーレーダビッドソンLiveWire_フロントスタイル2

今回、ハーレーがLiveWireを投入してきたことには理由がある。それは2輪を取り巻く市場環境の変化である。バイクユーザーの高齢化は日本だけの問題ではなく、ハーレーの主要マーケットである米国、そして欧州でも若い世代のライダーを育てていく必要に迫られている現状がある。加えて世界的な排ガス規制の強化などにより、4輪同様、今後は2輪もEVに置き換わっていくのは時代の流れである。

そこで、ハーレーとしては自らの圧倒的なブランド力を武器に、来たるべき新時代の覇者となるべく電動化への先鞭をつけたというわけだ。ちなみに“LiveWire”とは送電線を表す言葉だが、転じて活動的でエネルギッシュという意味もある。まさに世代交代を示唆するようなネーミングである。

バッテリー自体が車体そのもの

LiveWireは完全新設計のニューマシンである。2015年にプロトタイプが初お目見えしたが、その後も水面下で開発が進められ、今回デビューした量産市販車は「プロトとは何ひとつ同じパーツはない」と開発者が豪語するほど徹底的にアップグレードされている。

その中核になるのは、やはり電動ユニットだ。車体センター部分にアルミフレームでサンドイッチされる形で搭載されるのがLiveWireのエネルギー源となる高電圧バッテリー、すなわち15.5kWhを発生するリチウムイオン電池である。バッテリーを保護するアルミ製ハウジングそのものが車体を支える強度メンバーであり、側面に取り付けられたフィンが電池を冷却するヒートシンクとしても機能するなど考え抜かれた設計だ。

そして、バッテリーの底部には最高出力105psを発揮する水冷式モーターが組み込まれ、縦置きのモーターからの出力は90度変換されてギアボックス一体型のアウトプットシャフトからプーリーへ、さらにドライブベルトを通じて後輪へと伝えられる仕組みだ。ちなみにトランスミッションは存在しない。

ハーレーダビッドソンLiveWire_走行シーン4

ゼロ発進から速い異次元の加速感

電動バイクの加速とはどんなものか想像できるだろうか。4輪のEVが初期加速に優れることはよく知られているが、2輪は車体が軽い分さらに強烈だ。瞬間的に最大トルクを100%発生できる電動モーターの特性により、アクセルを開けた途端、まるで電磁カタパルトで打ち出される戦闘機のようにぶっ飛んでいく。

参考までにLiveWireの0-100km/h加速は3.0秒で、これはガソリンバイクでいうと1000ccクラスのスポーツモデルに匹敵する。パワーやトルクでこれを上回るガソリンバイクもあるが、ただレシプロエンジンの場合、回転数をある程度まで上げないと最大値を発揮できない。つまりパワーカーブは2次曲線的にならざるを得ないのだが、LiveWireはゼロ発進から最大トルクが出せるのでパワーカーブは台形になる。“加速感”が違うのだ。

ハーレーダビッドソンLiveWire_走行シーン3

もちろん、普通に乗るぶんにはアクセル操作もとてもスムーズで扱いやすく、渋滞路のような極低速域でも出力デリバリーは繊細で、多少デジタル的なクリック感はあるものの通常のバイクのように半クラ操作がいらないため、むしろ速度コントロールはしやすいと言える。

また、エンストの心配もないなど操作がシンプルな分、信号発進やUターンでもバランスも取りやすいと感じたほどだ。さらに言うと、蓄電するための回生ブレーキが強力に効くため、街を流すぶんにはブレーキ操作すらいらないほど。この感覚は4輪のワンペダルドライブに近いかも。

「操る悦び」がちゃんとある

ワインディングも想像以上にスポーティだ。日本の箱根のようなタイトな峠道でも軽快に切り返していく。車重は249kgと従来の大型バイク並みだが、エンジンを持たない電動ならではのスリムかつ低重心な車体のメリットは大きい。軽快な中にもどっしりとした安定感があり、大型バイクを操っている醍醐味もちゃんと味わえる。その辺りのハンドリングの作り込みはハーレーの伝統的な持ち味とも重なる。

ドライバビリティも秀逸で、アクセルを閉じると蓄電するための回生ブレーキが程よく効くため、通常のガソリンバイクと同じようにピッチングモーションによる車体姿勢の変化を生かして曲がっていける。電動でもバイクを操る悦び、ファン・トゥ・ライドがちゃんと存在しているのだ。

音も気持ちいい。加速とともに唸りを上げるモーターの高周波音と駆動系のメカノイズがミックスした独特のサウンドはけっこうな音量があり、ブラインドコーナーの向こうからも聞こえてくるレベル。ハーレーのVツイン独特の3拍子の鼓動感とはまったく異なるものではあるが、空気を切り裂く澄み切ったサウンドは未来を感じさせるワクワク感に満ちていた。

ハーレーダビッドソンLiveWire_走行シーン6

電制によるキャラの変わり映えが凄い

電子制御も最新バージョンが投入されている。4種類のライドモード(スポーツ、ロード、レイン、レンジ)に加え自分で好みのセッティングを作れる3つのカスタムモードを標準搭載。選択するモードによって出力特性の他、コーナリング対応のABSとトラコン、強力な回生ブレーキを緩和するADSL(バックトルクリミッターと同じ役目)などのレベルを、走行中でもボタンひとつで切り替えができる。

この辺りのファンクションは最近の高性能バイクでは当たり前になってきているが、こと伝統を重んじるハーレーでは初の試みである。そして、EVの特性上パワーの出方やエンブレの加減などすべてを電気的に制御できるため、モードによるキャラクターの変わり映えもガソリン車以上だ。

チャデモ対応の充電ステーションを完備

気になる航続距離だが、急速充電60分でほぼフル充電となり最大235kmの走行が可能。高速道路を使うと153kmとガソリンバイクよりは短くなるが、ハーレーとしてはLiveWireを街乗り主体の都市型モビリティとして位置付けているため現状では“十分なレベル”としている。参考までに、今回の試乗ではワインディングを含む約60kmの行程でバッテリー残量30%を表示していたことから、アグレッシブな走りをすると有効レンジはだいぶ短くなると思われた。

そこで気になるのが充電ステーションの整備である。ハーレー本社スタッフに率直に聞いてみたところ、LiveWireが日本に導入される際には全国のハーレーディーラーを中心に急速充電器が整備される予定だとか。さらに充電規格も日本ですでに広く普及している「CHAdeMO(チャデモ)」対応となるという。つまり、既存の4輪EV用の充電施設も使えるということだ。もちろん、家庭用電源にも対応している。

日本への導入時期は未定だが、おそらくは2020年以降となりそうだ。価格は米国仕様で 2万9799ドル(約320万円)ということなので、日本ではこれに多少上乗せしたプライスタグがつけられるはずだ。

まさに黒船来航! LiveWireが成功するか否かをユーザーだけでなく、世界中の2輪メーカーも見守っているはずだ。いずれにせよ、耳に残る電動サウンドを響かせながら駆け抜けるハーレーを日本の街角で見られる日は近い。

REPORT/ケニー佐川(Kentaro SAGAWA)

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