【自動車用語辞典:パワートレイン制御「ガソリンの燃焼噴射制御」】狙った空燃比に合わせてガソリンの供給量を調整する仕組み

■吸入する空気の量から燃料の量を推定する

●可変圧縮比エンジンなどの登場でますます重要な技術に

燃料噴射システムは、エンジンに供給される吸入空気量を計測して、目標とする空燃比になるように適切な燃料量をエンジンに供給する重要な役割を担っています。

高出力を確保しながら、燃費と排出ガスを低減するための燃料噴射システムと基本制御について解説していきます。

●燃料噴射システムの概要

燃料噴射制御の役割は、吸気系に装着したエアフローセンサーによって吸入空気量を計測して、空気量に見合った適切な噴射量を噴射弁に噴射させることです。

ベースとなる燃料噴射制御は、エンジン回転数と吸入空気量で決まり、ECUにあらかじめ噴射量マップとしてプログラムされています。これに運転状況に応じて、エンジン水温や吸入空気温度、EGR量などを考慮した補正を加えて、燃料噴射量が決定されます。

ガソリンエンジン燃焼噴射システム
燃料噴射システムが吸入空気の量によって燃料噴射の量を決定する
三元触媒の浄化効率
三元触媒は理想空燃比付近でもっとも浄化効率が高まる

エンジンの出力や燃費、排出ガス性能は、エンジンの燃焼特性に、燃焼特性は混合気の空燃比A/F(吸入空気量と燃料量の重量比)に大きく依存します。

高速高負荷運転で高出力が要求される場合は、燃料量を増やして空燃比をリッチ(濃い)に設定します。一方、低中速運転では三元触媒の浄化効率を上げて排出ガスを低減するために、空燃比は理論空燃比(14.7)近傍に設定します。

燃費を向上させるためには、燃料量を減らしたリーン混合気で運転する(リーンバーンと呼ぶ)のが理想ですが、三元触媒の浄化効率が下がるため、別に排出ガス浄化対策が必要です。

吸入空気量を計測するエアフローセンサーは、かつてはカルマン渦を利用したものもありましたが、現在の主流はホットワイヤ式です。ホットワイヤ式エアフローセンサーは、発熱線を流れに中に置き、空気の流れによって奪われる熱量から吸入空気量を求めます。原理的に質量流量が検出できるので、大気圧や気温の変化の影響を受けない扱いやすい特徴があります。

●空燃比フィードバック制御

上記のように三元触媒を有効に活用するためには、空燃比は運転条件が変化しても理論空燃比に設定しておくことが重要です。より精度高く理論空燃比に制御する手法が、空燃比フィードバック制御です。

フィードバック制御で使う空燃比の計測は、排気マニホールドに装着した酸素(O2)センサーで行います。酸素センサーは、排ガス中の酸素濃度を計測するセンサーで、理論空燃比を境に出力が急変します。この出力によって、空燃比が理論空燃比に対してリッチ(濃い)かリーン(薄い)かを判定し、燃料噴射量を増減して空燃比を微調整します。

空燃比の計測をさらに精度良く計測するために、出力が空燃比に対してリニアに変化するリニアA/F(空燃比)センサーを用いる場合もあります。

●有害3成分の同時浄化

三元触媒は、空燃比を理論空燃比(14.7)近傍に設定すれば、COとHCは酸化反応、NOxは還元反応で有害3成分を同時に浄化します。

・COの酸化  2CO + O2 → 2CO2
・HCの酸化  4CxHy + (4x + y)O2 → 4xCO2 + 2yH2O
・NOxの還元 2NOx → xO2 + N2

酸素センサーの出力特性
排気マニホールドに装着された酸素センサーから得られるデータで、空燃比が薄いか濃いかを判断する

●筒内噴射エンジンの燃料噴射制御

最近増えてきたシリンダーに直接高圧燃料を噴射する筒内噴射方式の噴射システムは、従来の吸気マニホールドに噴射弁を装着したMPI(マルチポイントインジェクション)システムとは異なります。

圧力の高いシリンダーの中に燃料を噴射するため、噴射圧力はポート噴射の0.3~0.4MPに対して、最大50MPa程度まで高める必要があります。

筒内噴射エンジンは、出力向上と燃費低減が両立できる大きなメリットがあります。一方で、メリットを発揮するには、燃料噴射システムにはディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムと同様複雑かつ高精度な制御が要求されます。


エンジンの性能や燃費、排出ガス性能を向上させるために新しい技術を採用すればするだけ、制御パラメーターが増えて、制御が複雑になります。

可変圧縮比エンジンやHCCI(予混合圧縮着火)エンジンが実用化されつつある現在、ますます制御の重要性が高まっています。

(Mr.ソラン)