チーム全体で勝ち取った琢磨の今季2勝目「この数日間は苦しかったが、チームはずっと支えてくれた」

 先週のインディカー・シリーズ第14戦ポコノでは、オープニングラップの多重クラッシュを起こしたスケープゴートとされ、アレクサンダー・ロッシ、ライアン・ハンターレイらドライバーだけでなく、一般のレースファンからも激しくバッシングを受けたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨。

 その後、自分のマシンのオンボード映像を公開し、自らの無実を証明したが炎上は消えず水曜日に琢磨の所属するレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが異例とも言えるチームステートメントを出し、ようやく事態は沈静化の方向に向かった。

 第15戦の舞台ワールドワイド・テクノロジー・レースウェイのゲートウェイに来てからも琢磨とマネージメント、そしてチーム広報らが、ホストTV局関係者、解説陣ともミーティングを行っており、ゲートウエイの中継冒頭でこのポコノの一件について再度取り上げるなど動きを見せた。

 またパドック内でレースファンの多くが、琢磨をサポートする声をかけていた様子が印象的だった。

 事態が収束に向かい完全に気持ちが切り替えられたかどうかは当の琢磨本人しか知り得ないが、マシンに座った琢磨はいつも通り着実に仕事をこなしていった。

 最初のプラクティスでは8番手のポジションにつけ、その後の予選ではウォームアップラップからペースを上げて、5番手につけた。夜のウォームアップ走行、プラクティス2でも4番手と予選から決勝に向けても順調にマシンを仕上げたように見えた。

 だが琢磨は「マシンそのもののダウンフォースが足りず、エンジンのパワーが勝ちすぎていると思うんです。タイヤのプロファイルも変わったので、ロングランもしましたが、2ワイドになるのは難しいし、レースは抜きにくい難しいレースになると思う」と、レースでのオーバーテイクの難しさを予想していた。左右非対称のショートオーバルはレース攻略を難しいものにしていた。

 一夜明けて土曜日の決勝レース。スタート前にジェイムズ・ヒンチクリフと話し、ポコノの一件について済んでしまった事だから仕方がないと言っていたと語るが、そのヒンチクリフがグリーンフラッグが振られた瞬間に、人が変わったように内側から琢磨を抜きにかかった。

「あんなこと言ってたヒンチがイン側から急に来てびっくりした(笑)」という琢磨はヒンチクリフと軽く接触し、マシンのバランスを崩し大きく順位を落とす。

レーススタート直後に集団に飲み込まれる佐藤琢磨
レーススタート直後に集団に飲み込まれる佐藤琢磨

 13番手まで落ちた琢磨だったが、「マシンのバランスがあまり良くなかったし、アウト側にラインを外してしまうと、ぜんぜん戻ってこれなかった」と言いながらも奮闘。オーバーテイクを試みるもふたつ順位を落とすなど、苦労していた。

 16番手まで落ち厳しい状態を察知したチームは早めのピットインを敢行し、琢磨をピットに呼んだ。43周目に入った琢磨は、すぐにラップダウンとなってしまったが、ニュータイヤを履いた直後から奮闘し、ペースを上げた。

「この後はタイヤをもたせながらストレッチして速く走る必要があった」という琢磨はタイヤと燃費の両方を維持して、うまく周回を重ねていた。

 2度目のピット作業は66周目のイエローコーション中に行い、3スティント目に入るとさらに加速してペースを上げ、119周目にラップダウンを戻すと7番手まで浮上していた。

 シークエンスを変えたことにより、後方に甘んじているように見えていたが、前方のマシンがピットに入っている間は大きく順位を戻す。3度目のピットインもイエローコーションで入り12~13番手に戻ると、レースは半分を終えていた。

 ここからのスピードが脅威的だった。174周目に上位のピットでトップ10圏内に入ると、188周目にはトップに立った。そして琢磨がピットに入ろうとした190周目にイエローコーションとなり、琢磨はステイアウト。

「ピットインのタイミングで2度もイエローコーションになってピットに入れず、最後のピットストップは本当に燃料がギリギリだった」と語る琢磨。

 ピットオープン後に最後のピット作業をし、トップのままコースに戻った。

 イエローコーション明けに後ろに迫ったいたのはベテランのトニー・カナーンだった。リスタートでうまくカナーンを離した琢磨だったが、「トップに立ったらまたマシンのバランスが悪くなった」と言い、そのペースを上回るスピードでエド・カーペンターが追い上げて来て、ラスト5周でカナーンをかわし、琢磨を追いかける。

 琢磨はハンドリングの厳しいマシンをどうにか操っていたが、最終ラップのターン4ではカーペンターが背後に迫っていた。

 だがコントロールラインを鼻差で逃げ切りチェッカーを受け、今季2勝目のチェッカーを受けた。インディカー通算5勝目の勝利だった。

日の丸を掲げ勝利を喜ぶ佐藤琢磨
日の丸を掲げ勝利を喜ぶ佐藤琢磨

「最後はタイヤのバランスが厳しくて辛かった。でも逃げ切れてうれしいです! あと1周あったらエドにやられてましたね」

「この数日間は苦しかったけれど、先週のポコノからチームはずっと僕を支えてくれましたし、今日も素晴らしい作戦で僕を勝たせてくれた。本当にチームに感謝したいですね。しばらく結果が出なくて厳しいレースが続いていましたけど、これで長いトンネルは抜けられたのかなと思います。来週は昨年勝ったポートランドだし、楽しみにしています」

 残るは2戦となったインディカー・シリーズ。この勝利で再び勢いに乗ることができるのか? 琢磨がどんなレースを見せてくれるのか注目だ。

琢磨が42歳、カーペンターが38歳、カナーンが44歳とベテラン3人の表彰台に
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