ホンダF1山本MD前半戦総括(2)真のトップドライバーとして尊敬するフェルスタッペンとアロンソの相違点

 山本雅史マネージングディレクターの語る前半戦総括。その2では、シーズン後半戦に向けての期待、そして山本MDがF1において「本当に凄い」と思ったふたりのドライバー、マックス・フェルスタッペンとフェルナンド・アロンソについて語った。

――フランスGPが分岐点ということでしたが、その伏線としてはスペック2、スペック3とパワーユニット(PU/エンジン)を順調にアップデートさせて行ったことがあったわけですよね。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):
それは、もちろんです。開幕戦のスペック1に比べれば、馬力と信頼性のバランスも、ずっとよくなっている。性能は確実に上がっているのに、本当に壊れなくなった。

――僕らも去年はほぼ毎回、「今日は何があったんですか」と質問したものです。今年は、聞くことがない(笑)。
山本MD:その進歩は、本当に凄いですよね。

――それだけの伸び代は、山本さんにも予想外でしたか?
山本MD:いえ、田辺(豊治/F1テクニカルディレクター)もよく言っていますが、レースは(エンジンを)壊したら台無しになってしまう。チェッカーを受けることが第一です。しかし、田辺は本当に壊さないレースをしています。それは凄いことですし、一方で攻めどころもきっちり見つけたのがオーストリアでした。みんなが一段か二段、成長しました。

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝
2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝

――攻めながら壊さないのは、本当に難しいですね。
山本MD:本当です。壊さずに攻める。それをエンジニアたちが、オーストリアで学んだんじゃないかな。

――今までは、そのギリギリのところが見えていなかったのでしょうか。
山本MD:ギリギリというか、コース特性をしっかり把握して、そこに合ったキャリブレーション(調整)を緻密にやっているのだと思います。微妙な勾配とかミューの変化、温度変化への対応、そういうのが全部ドンピシャでできた。そんなことは滅多にないことだし、F1の奥深さなんでしょうね。

――苦手なはずのシルバーストンであれだけ戦えると、スパ(・フランコルシャン/第13戦ベルギーGP)やモンツァ(第14戦イタリアGP)でも期待してしまいます。
山本MD:モンツァは、個人的に期待しています。でもスパは、全開率が高いですからね。まあ、やってみないとわからない。たしかにシルバーストンは、あそこまで戦えるとは思わなかった。なのでどこがいいとか悪いとか、もう言えなくなってるかもしれない。

――ホンダF1の組織改革をしてきて、それがようやく実ったという感じですか。あるいは去年後半に、すでに手応えを感じていましたか?
山本MD:今の浅木(泰昭 HRD Sakuraセンター長)・田辺体制は、本当にいいコンビネーションだと思います。

■真のトップドライバーは、「エンジンも究極の領域まで使う」

――攻めと守りですか。
山本MD:まあ、極端に言うと、そうですね。攻める人だけだと毎回壊れるかもしれないし、そこはバランスですよね。攻める開発者がいて、現場で確実にオペレーションするのが田辺ですね。

――田辺さんに聞いた時は、「特にフランスが、コンサバなモード過ぎたわけではない」ということでした。
山本MD:細かく言うと、4人のドライバーはフォーメーションラップの走らせ方からして、それぞれ違う。そういうのも含めて、もっとコミュニケーションを密に取らないといけないというのが、フランスの教訓でしたね。

――フェルスタッペンだけパワーが落ちたのは、彼の走らせ方が違っていたからですか?
山本MD:そう。使い方ですね。真のトップドライバーは、エンジンにしても究極の領域まで使う。それを実感したのは、マックスでふたり目です。

――ひとり目は?
山本MD:フェルナンド(・アロンソ)でした。インディ500の時に、こいつは本当に凄いなと思った。

――その意味でも本当に、もったいないドライバーですね(笑)
山本MD:いやあ(笑)僕はドライバーとしては、本当にリスペクトしていますよ。ただマックスや、今も日本で走ってくれているジェンソン(・バトン)が本当にそうですけど、ドライバーというのはチームの中心にいてくれないと。そうじゃないと、シーズン全体を戦えない。その辺がフェルナンドは、少しな~という感じでしたね。

2017年 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)
2017年 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)

――1年に1回の、インディ500ならともかく。
山本MD:そうかもしれない(笑)

■「流れを感じた」というオーストリアGP

――開幕時には、「モナコまでには勝ちたい」と言っていました。
山本MD:そう。それが心残りで。パワーユニットと車体の進化、マックスの腕を持ってすれば、モナコが狙い目だと見ていた。前戦スペインの時は、(低速コーナーの連続する)最終区間しか見ていなくて、今だから言いますけど、「これは、モナコだめかも」と暗くなっていました。

――(スペインでは)メルセデスがぶっちぎりの速さでしたからね。
山本MD:そう。

――でもモナコは、あのペナルティ(2位でフィニッシュも5秒ペナルティで4位に降格)がなければ、堂々とした首位争いでした。
山本MD:ええ。少し慰められました。でもモナコのあとは、正直しばらくブルーでした。凹んでいました(笑)

――その時点では、前半まさか2勝もするとは……。
山本MD:とても思えなかったですね。でも次にみんなの気持ちが高ぶっていくのは、オーストリアかなと思っていました。それで金曜日から、追い風が吹いているのを感じて、その日の夕方に「優勝リリース、用意しとけ」と広報に言ったりしたわけです。流れが、そうでしたね。

 そんなふうに思うことなんて滅多にないし、(2勝目の)ドイツの時はまったく思いませんでした。仕事できているとはいえ、こんなにワクワクさせてもらえるのは本当にありがたい。そのワクワクを、ファンのみなさんと共有できているとしたら、それも本当にうれしいことです。

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)