【エンジンオイルを正しく選ぶ】「●×W-30」の数字とか、「鉱物油」「部分合成油」ってどんな意味?

エンジンオイルは選び方を一歩間違えば、エンジンの破損を招いてしまう、単純なようで、実はとってもシビアなもの。とはいえ、エンジンオイルの種類を、すべて店任せにするなんて、ちょっともったいない! ビギナーが必ず押さえておきたい、4サイクル=4ストローク(略して4スト)用エンジンオイルの種類や特徴、選び方の基本をチェックしてみよう。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

4ストローク用エンジンオイルの役割は、潤滑・冷却・密封・洗浄

▲写真は4ストローク(4サイクル)用エンジンオイル。

 4ストローク用エンジンの作用・役割は、主に4つ。

1:金属パーツが互いに擦れ合うことで発生する摩擦を軽減させたり、摩擦による焼き付きを防止する「潤滑作用」

2:エンジン内部をオイルが潤滑することにより、エンジンの熱を吸収。つまり、エンジンを冷やす「冷却作用」

3:ピストンとピストンリングなど、エンジン内部のパーツとパーツの間に入り込んで、スキマを埋める「密封作用」

4:摩擦や燃焼によって発生する、金属粉やカーボン等のゴミを洗い流す「洗浄作用」。エンジンオイルが徐々に黒くなるのは、これが原因

“4ストエンジンのバイク”には、「2スト用」や「自動車用」のエンジンオイルは絶対にNG!

▲ヤマハの純正2ストローク(2サイクル)用エンジンオイル。2スト用を強調するため、中央には“2”の文字を配置。

 バイク用エンジンオイルには、大きく分けて、「4ストローク用」と「2ストローク用」がある。

 現在、ほとんどの公道走行用モデルは、クリーンで燃費の良い4ストロークエンジンを採用。かつて小排気量車をメインに採用されいた2ストロークエンジン(部品点数が少なくて構造もシンプルなため、軽量でコスト安。しかもパワーを出しやすいため、小排気量車に向いていた)は、現況、厳しい排ガス規制をクリアしづらいため、国産の公道走行用モデルにほとんど採用されていない。

 ビギナーに覚えておいて欲しいのは、「4ストロークエンジン」と「2ストロークエンジン」の構造は、まったくの別物である。つまり、「4ストローク用エンジンオイル」と「2ストローク用エンジンオイル」も、まったくの別成分で構成されているのだ。

4ストのバイクに「2スト用エンジンオイル」や「自動車用エンジンオイル」を使ったら、どうなる?

▲自動車メーカーのトヨタが発売する、純正自動車用エンジンオイル。

 2スローク用エンジンオイルは、ガソリンとエンジンオイルを一緒に燃焼させるため、燃えやすい構造(4ストローク用エンジンオイルは、2ストローク用よりも燃えにくいのが特徴)。

 そのため、もしも間違って4ストエンジンに、2ストローク用エンジンオイルを入れてしまったら、エンジンが故障する。

 自動車用エンジンオイルを、バイクに使用するのもNG。主な理由は、

・自動車の実用回転数や最高回転数はバイクに比べて低い=高回転型のバイクに自動車用オイルを使用した場合、潤滑や冷却が追い付かず、焼き付き等のトラブルを招く恐れがあるから

・自動車用エンジンオイルに含まれた添加剤により、クラッチが滑る等のトラブルが発生するから

 4ストロークエンジンを搭載したバイクには、必ず4ストロークバイク用エンジンオイルを使用することが大切。

「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」どれを選ぶべき?

▲オイルの種類は本体に明記。写真は「100%化学合成油」。

 4ストローク用エンジンオイルには、「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の3種類がある(※注1)。

 性能面でいえば、

 鉱物油<部分合成油<100%化学合成油

 という図式。なお、性能と同じく、価格も、

 鉱物油<部分合成油<100%化学合成油

 の順番となる。

 一般的に、鉱物油を入れたマシンで、長時間に渡り、高回転域を使用すると……。超高温になった鉱物油は、オイルそのものの分子が壊され、粘度を保つことができず、サラサラになる。

 その結果、エンジン焼き付き等のトラブルを招く可能性大。

 レースなどで使用する場合は、街乗りやツーリングに適した「鉱物油」「部分合成油」ではなく、高温時でも油膜が切れにくい、高性能な100%化学合成油(レーシングオイル)を選ぶのが常識だ。

▲ストリートユースからロングツーリングまで幅広く使える「部分合成油」。
▲低中回転域を重視したエンジンや、街乗りに対応する「鉱物油」。

 走行中の油膜切れは、エンジンにとって致命傷になりうる現象。

 たとえ同じマシンでも、街乗りやツーリングに使用するのか? 長時間、高回転域を多用する、レースや峠の走行に使用するのか? エンジンをトラブルから守り、エンジンの寿命を長持ちさせるためにも、用途に応じたエンジンオイル選びをするのがオススメだ。

 峠をガンガン攻める時に、「100%化学合成油は高額だから」と、エンジンオイル代をケッチって、安価な粗悪オイルを使用すると、エンジンの寿命は確実に縮まるのはもちろん、エンジンが焼き付いて修理代がウン十万円……なんてことになることもあるので要注意。

※注1:「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の各オイルは、『ベースオイル』とも呼ばれる。

ベースオイルには、性能を補う目的で、オイルの寿命を延ばす酸化剤、エンジン内部をキレイに保つための洗浄分散材、粘度を保つ粘性保持剤など、各社のノウハウを反映した添加剤がブレンドされているのが特徴。

一口に「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」といっても、実は各エンジンオイルメーカーこだわりの性質や特性が注がれている。

「高性能で優れたエンジンオイル」とは?

▲すべて同じメーカーのエンジンオイル。写真左から「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」。肉眼で見る限り、見た目に大きな違いはない。

 エンジンオイルにとって、潤滑・冷却・密封・洗浄作用は当たり前。昨今では、エンジンの進化とともに、オイルの性能も飛躍的にアップしている。

 現在、市販されている「高性能で優れたエンジンオイル」とは、

1:超低温でも始動性が良い

2:ストリートやツーリングで多用する低中回転域において、エンジン内のパーツにかかる抵抗を最小限に抑える理想的な粘度を保持。その結果、燃費が向上

3:高温になっても、粘度の変化が少ない。具体的には、長時間、高回転を多用して高温が続いても潤滑性が良く、油膜が切れない

4:温度低下が早い=放熱性が良い

 これらの大部分を満たすエンジンオイルは、100%化学合成油の中でも、非常に高価(鉱物油や部分合成油よりも製造に手間がかかり、コスト高。これが価格に反映される)でハイスペックな、レース用のレーシングオイルのみ。

 ビギナーは、「どの項目を重視すべきか?」を念頭に置き、パーツショップや販売店の店員さんと相談しつつ、自分に合ったエンジンオイル選びを実践しよう。

エンジンオイルの“粘度”の見方

 エンジンオイルの容器に明記されている「10W-30」「10W-40」「5W-40」「20W-60」(いずれも、低温&高温での性能を両立させているため、マルチグレードと呼ばれる)という数字。

 これらは、寒さに対する強さと、オイルの粘度(柔らかさ。ドロドロ具合)を表したもの。

 粘度はメーカー指定を選ぶのが基本だが、季節や用途によって変更するユーザーも多数。

●●W=エンジンが始動できる温度の目安

 ●●Wは、どのくらいの寒さまで、エンジンが始動できるかを示す。W=Winterの略で、“寒さ”を意味する。

・20W=マイナス10℃まで
・10W=マイナス20℃まで
・5W=マイナス25℃まで

 この数位が低いほど、寒さの厳しい寒冷地に強いエンジンオイルだといえる。

– ●●=高温側の粘度

 ハイフン(-)右側の数字は、高温側の粘度のことで、エンジンオイルが熱をもった時(100℃。つまり運転中)の、オイルの粘りを示す。

 数値が小さいほど、熱をもった時に柔らかく、逆に高いほど熱をもっても粘度が高い。

 粘度は30~60が一般的。

「粘度から見る、エンジンオイル選び」の具体例

 ここに「①10W-30」「②20W-60」「③5W-40」の3種類のエンジンオイルがあるとしよう。

 キミなら、どれを選ぶ?

 「-●●」の数値がもっとも小さな(数値が小さいほど、熱をもった時に柔らかい)①は、エンジン内部の各パーツにかかるフリクション(抵抗・負担)が減少するため、②よりも燃費が向上する傾向にあり。

 「-●●」の数値が大きい②は、①よりも高温時の被膜保持や、粘度の安定性に優れたタイプ。

 つまり、一般的に、

 ①は低中回転域を多用する、街乗りやツーリングに適したタイプ

 ②は高回転域を多用し続ける、レースや峠の走行に向いたタイプ

 ③はマイナス25℃でもエンジン始動が可能な、寒冷地や真冬でも安心して使えるタイプ

 であるといえる。