大人気カテゴリーに向けて注目のSUV各車が出した回答

いまや全自動車メーカーの最重要案件、と言っても過言ではない市場へと発展を遂げた都市型クロスオーバーSUV。群雄割拠の中で存在感を放つためには、単に各項目で合格点を得るだけではなく、”欲しい!”と思わせる魅力が必要だ。各々の個性は、果たしてどの部分に結実したのだろうか?

REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)/平野陽(HIRANO Akio)

※本稿は2018年3月発売の「三菱エクリプスクロスのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

MITSUBISHI ECLIPSE CROSS G Plus Package(4WD)

三菱らしい走りの機能性と、スタイリッシュなディテールが融合したクーペSUV的なフォルムは実に新鮮なもの。ダウンサイジングの1.5ℓ直噴ターボやナビ/オーディオのコネクティッド機能、タッチパッドコントローラーなど、メカニズム面での新たなチャレンジも数多い。

直列4気筒DOHCターボ/1498㏄
最高出力:150㎰/5500rpm
最大トルク:24.5㎏m/2000-3500rpm
JC08モード燃費:14.0㎞/ℓ
車両本体価格:309万5280円

まさに”旬”というべき分野に満を持して投入

「SUVの三菱」がここ数年でリリースした新型車は、なるほど大半がSUVである。ほぼ唯一の例外は2013年から14年にかけて発表された軽自動車(eKシリーズ)だった。その前が12年発売の二代目アウトランダーで、軽自動車2台をはさんで15年に発売されたのも海外向けSUVのパジェロスポーツ/モンテロスポーツだった。

 本書の主役であるエクリプスクロスは17年にグローバルデビューを飾ったが、実は昨年には三菱の新型車がもう1台、デビューしている。それはインドネシアの新工場で生産され、アセアン諸国を中心に販売される「エクスパンダー」というクルマで、これもまた3列シートながら最低地上高を高めたSUVだ。

 三菱はエクリプスクロスを「コンパクトSUV」と分類する。コンパクトSUVは世界的に最も旬のジャンルであり、エクリプスクロスはそんな成長市場に満を持して投入される三菱の戦略商品である。

 ただ、コンパクトという言葉は良くも悪くも曖昧だ。まして、SUVはまだ新しいジャンルで、今は各社が趣向を凝らした新機軸を次々と打ち出している真っ只中でもあり、セグメント区分もハッチバックやセダンほど定まっていない。よって「コンパクトSUV」と聞いて直感的にイメージするクルマが、人によって微妙に異なることも事実である。

 我が日本や欧州では、Bセグメントハッチバックと土台を共有して全長が4.3m未満のタイプを、コンパクトSUVと考える人が多い。

 日本車でいうと日産ジュークからマツダCX-3あたりがそれにあたる。さらに今回連れ出したホンダ・ヴェゼルもBセグのフィット由来のセンタータンクプラットフォームに、全長も最近までギリギリで4.2m台に収められており、日欧的なコンパクトSUVの代表格である。

 ただ、北米やアジア、ロシアなども含めたグローバル市場で見ると、最近はもうひとまわり立派なタイプが、「コンパクト(な)SUV」のボリュームゾーンとなりつつある。

 例えば、一昨年デビューしたトヨタのC-HRである。その価格設定は前記のBセグメントSUVに近いが、ハードウェアはプリウスと共通のCセグメント骨格(TNGA)に全長4.3m台半ばのボディを載せる。このように、C-HRはサイズのみならず乗り味や質感面でもBセグメントSUVの1.5〜1クラス上をいくのが大きな売りだ。

 さらに、ミニ・クロスオーバーやジープ・コンパスなど、ここ1〜2年で世に出たグローバル・コンパクトSUVは総じてC-HRに似たサイズ感である。そう考えると、ヴェゼルが18年2月のマイナーチェンジで全長を4.3m台にまで伸ばしたのも、こうした世界的なトレンドに沿ったプチ上級移行と理解できる。

 というわけで、エクリプスクロスはこうした最新のコンパクトSUVのトレンドにドンピシャである。

 兄貴分のアウトランダーと共用するプラットフォームも、従来の感覚だと少しばかり贅沢にも思えてしまうかもしれないが、今どき感覚ではまさにド真ん中。4.4m強の全長は競合車と比較しても最も立派な部類に入るが、それをコンパクトSUVの価格で売るのだから、なるほどコスパは高い。また、C-HRの例をあげるまでもなく、スポーツクーペ的なルックスもSUVにおける流行のひとつになりつつある。

 ……といった最新事情を勘案しても、ここにマツダCX-5がいることに違和感をおぼえる向きはあろう。全長4.5mを軽く超えるCX-5のサイズはミドルクラスとしては明確に引き締まっているが、さすがにコンパクトSUVと呼ぶには立派過ぎる。エンジンのラインナップ構成も完全にひとクラス上のミドルクラスSUVのそれだし、内装調度に至ってはそのミドルクラスのトップをうかがうほどの高級感なのだ。

 しかし、エクリプスクロスの国内販売戦略では、C-HRやヴェゼルなどの量販SUV以上に、ある意味で階級の違うCX-5を最大の競合車として意識しているという。

 その最大の理由は価格だ。今回連れ出したCX-5は2.5ℓガソリン+4WDの中間グレード「プロアクティブ」である。このグレードは先進安全装備が標準で、さらに電動シートなどの快適装備を追加しても300万円台前半に収まってしまう。つまり、性能的にも三菱の1.5ℓターボと同等なら価格設定もエクリプスクロスの「Gプラスパッケージ」とほぼガチンコということになる。

 さらにいうと、CX-5は2.0ℓのFF車なら同等装備でも300万円を切る。アッパークラス感ただよう重厚で静かな乗り味やサイズなどの車格を考えると、CX-5の国内価格は競合車に思わず同情したくなるほどの破壊力を持っている。

TOYOTA C-HR G-T

コンセプトカーがそのまま公道に現れたかのような、斬新なスタイリングが目を惹く。プリウスと共通部分の多いプラットフォームは、SUVながらニュルブルクリンクでのテストを重ね走りを磨いた。1.2ℓ直噴ターボに加え1.8ℓハイブリッド(FF)も用意する。

直列4気筒DOHCターボ/1196㏄
最高出力:116㎰/5200-5600rpm
最大トルク:18.9㎏m/1500-4000rpm
JC08モード燃費:15.4㎞/ℓ
車両本体価格:277万5600円

外観のイメージに反する室内空間の広さが印象的

 そんなCX-5にも劣らぬ商品力を標榜するエクリプスクロスのサイズ感や商品企画は、前記の通り、コンパクトSUVの最新トレンドそのものだ。ただ、その一方でパッケージレイアウトや実用性、走りにおいては、意外なほど基本に忠実で、いい意味で伝統的な味わいなのがエクリプスクロスである。

 驚かされるのは、エクリプスクロスの室内空間の広さだ。改めて観察すると、エクリプスクロスのスポーツクーペ的な雰囲気を醸成しているのは、主に強く傾斜させた前後ウインドウとサイドウインドウグラフィックであり、それを強調する前後ボディエンドの造形である。2670㎜というホイールベースはアウトランダーそのままで、1695㎜という全高もSUVとしては低くない……どころか、今では結構背高な部類に入るのだ。

 三菱の開発陣も「後席の乗降性ははっきりと割り切った」と語っている通り、エクリプスクロスの後席はウインドウ面積も小さくて閉所感が強いのは事実。しかし、いったんシートに収まってしまえば、空間そのものは意外に広く、ボディがひとまわり大きいCX-5とも大差はない。乗降時に脚が汚れにくいようにと、サイドシルをドアでフルカバーする設計も良心的である。

 荷室も絶対的な大きさはCX-5はもちろんヴェゼルにも譲るが、200㎜近い後席スライドを駆使すれば、少なくとも荷室前後長は今回で最長クラスまで広げられる。さらに細かいことだが、リヤゲートの取っ手が扱いやすいグラブバー式なのも良心的なディテールだ。

 改めて考えてみれば、エクリプスクロスに限らず、今回の4台はすべて「細かな実用性よりまずはデザイン」で仕上げられたスタイリッシュ系SUVということもできる。CX-5は横置きFFベースとは思えないロングノーズシルエットを大きな売りとしているし、ヴェゼルも猫背スタイルのスモールキャビンが基本となるボディ造形である。

 C-HRについてはもはや説明すら不要だろう(笑)。SUVながら立体駐車場を視野に入れたパッケージで、今回ではボディサイズが2番目に小さいくせに、ウインドウは最も寝かせられている。さらにいちいち抑揚や凹凸がつけられた造形は、少なくとも空間効率的には無駄が多い。

 事実、後席もトランクもC-HRが飛び抜けて狭く、傾斜したダッシュボードや、やけに立派なセンターコンソールもあって、前席もスポーツカーのようにタイトだ。それにしても、ごく普通のファミリーカーとして買う人にまで「室内やトランクは事前にご確認ください」と忠告しなければならないSUVが、こんなに普通に売られることになるとは、数年前までは想像もつかなかった。

 ヴェゼルのキャビンはC-HRとは正反対に驚異的に広い。外寸は今回の4台で最小ながら後席空間と荷室は最大級。しかも、細かい寸法はともかく、リアルな使い勝手において圧倒的なのはひと目で分かる。さすがはホンダのセンタータンク車で、後席や荷室付近の低床っぷりは、何度見ても感心するばかりだ。

 こうしてパッケージレイアウト的には両極に位置するC-HRやヴェゼルと比較すると、CX-5はちょうどよく広く、エクリプスクロスはスポーツクーペルックには似つかわしくないほど広い。

 CX-5のパッケージは空間効率の高いタイプとはいえないが、ひとクラス上の立派なボディサイズが効いていて、絶対的にはヴェゼルに次いで広い。対するエクリプスクロスは正しくコンパクトSUVのサイズだが、ディメンションやパッケージレイアウトまで、そのスポーツクーペルックからは想像しづらいほどに生真面目なのだ。

 エクリプスクロスは、インテリアもいい意味でオーソドックス。さすがに各部の素材使いではCX-5がアタマひとつ抜けた高級感があるが、少なくともヴェゼルやC-HRには優るとも劣らない。各部の造形やレイアウトもアウトランダーより明確に新しくてスポーティだが、エクリプスクロスの内外装に通底しているのも「生真面目」である。

 エクリプスクロスのインテリアにはC-HRやヴェゼルのようにムダ(?)な曲線や抑揚はほぼ存在しない。同時に、マツダのコマンダーコントロールに続いて三菱もナビ/AV操作系に新世代インターフェース(=タッチパッドコントローラー)に踏み込みつつも、見慣れた位置に伝統的なスイッチもそれなりに残される。また、豊富な収納や実用的な空間設計など、あくまで「使い勝手のいいSUVでありたい」との思いが、エクリプスクロスでは全身からにじみ出ている。

MAZDA CX-5 25S PROACTIVE

初代の登場から5年というタイミングで、昨年2月にフルモデルチェンジ。まさに正常進化と言うべき全方位の性能/質感向上を果たし、マツダ新世代商品群の基軸として世界的ヒットを続けている。※撮影車両は2018年2月発表の商品改良前のモデル。

直列4気筒DOHC/2488㏄
最高出力:184㎰/6000rpm
最大トルク:25.0㎏m/4000rpm
JC08モード燃費:14.6㎞/ℓ
車両本体価格:291万6000円

「四駆の三菱」の伝統が健在のハンドリング特性

 こうした「一見チャラそうなのに、実は優等生」というエクリプスクロスの本質は、デザインやパッケージレイアウトだけでなく、走りにも色濃く表れている。

 三菱の新開発1.5ℓターボは前記のように絶対的な性能値は2.5ℓ自然吸気とほぼ同等ながら、車重はCX-5より大人ひとり分も軽い。

 だから、エクリプスクロスの実際の動力性能も今回で1、2を争うパンチがあるのだが、テストコースの構内路を市街地に見立てて走らせたり、あるいは高速周回路を気持ちよくクルーズさせている限り、最初に頭をよぎる言葉は、穏当、重厚、快適、静粛……といったものだった。ロール方向の動きだけがしっかりチェックされているのは現代的な味つけだが、全体にはいい意味で古典的なSUVの味わいが残っている。

 対して、わざわざ「RS」グレードを名乗る今回のヴェゼルや、開発当時は「トヨタ随一の走り自慢」を目指したC-HRは、いかにも姿勢変化の少ないシャープで快活なスポーティさを標榜する。これはこれでいかにも現代風のSUVだが、エクリプスクロスの地上高を最大限に活かしたストローク感のある乗り心地を味わうと「SUVなのに、こんなに敏感に走る必要あるのか?」といった素朴な疑問が改めて脳裏をよぎったりもした。エクリプスクロスの本質は、やはり生真面目なのだ。

 その上で「これぞエクリプスクロス……という走りを味わってほしい」と、三菱はたっぷりと水を撒いたスキッドパッドに、タイトなジムカーナコースを用意した。それはもちろん、自慢の4WDシステム「S-AWC」が真価を発揮できそうなシーンを再現したコースである。

 三菱のS-AWCも、前輪駆動をベースにあらゆるパラメーターから走行状況を感知して、センターデフの断続機構を制御して後輪へトルク配分する……という点では、マツダやトヨタの最新4WDと基本的には同じである。ただ、その前後トルク配分をより積極的に行なって、さらに左右のブレーキ制御も加味し「ヨー=曲がり」をグイグイとアシストするのが三菱S-AWCの真骨頂である。

 エクリプスクロスの開発陣がいわんとしていることは、特設ジムカーナを1回走っただけで理解できた。なるほどステアリングだけで曲がろうとすると、身のこなしは意外なほどマイルドなのだが、そこに積極的なスロットル操作を追加すると、エクリプスクロスのコーナリングはいきなり生命が吹き込まれたかのように生き生きとしてくるのだ。

 生真面目で優しい基本フィジカルに、強力なダウンサイジングターボエンジン、そこにグイグイと介入してくるS-AWCの融合……が、エクリプスクロスの走りである。

 緻密で素早いトルク配分という意味では、CX-5にも採用されているマツダの「i-ACTIV AWD」も定評があり、ブレーキ制御をしないかわりに操舵に応じてエンジントルクを微小に増減させる「G-ベクタリングコントロール」も加わる。ただ、基本的には余剰トルクを分散するのが主目的の安定志向4WDであり、だから目指すべき走りの理想像はFF車と同一線上にある。

 トヨタの4WDも、狙いはマツダと同じく安定志向だが、C-HRで4WDを選ぶと、自動的にエンジンが1.2ℓターボになってしまうのが少し残念。いや、エンジンが一択でもいいのだが、動力性能が物足りない感があるのは事実である。

 試乗車の関係もあって今回で唯一のFF車となったヴェゼル「RS」だが、ウエットのジムカーナで、エクリプスクロスの次に嬉々として曲がってくれたのは、実はヴェゼルだった。ホンダにおける「RS」は他社なら「GTI」とか「スポーツ」といった名称を与えられるべき本格スポーツモデルだ。実際、ヴェゼル「RS」もサスペンションのみならずボディまで専用に強化されており、いかにもホットハッチ的な鋭い旋回性能を披露する。ただ、そのぶん乗り心地もエクリプスクロスより素直に引き締まっている。

 開発インタビューでも、エクリプスクロス開発担当者たちは「SUVの三菱」という表現を何度も使った。

 このクルマの大胆なクーペルックや、S-AWCによる「ランエボもかくや」の旋回性能は、なるほど百花繚乱の最新コンパクトSUV市場で埋没しないセールスポイントになりえるだろう。

 しかし、同時に、室内空間や積載性能、視界、使い勝手、日常性、人間工学、最低地上高や○○アングルに代表される悪路走破性、そしてSUVにあるべき乗り心地や操縦性……といった根幹部分では、エクリプスクロスはクラスでも随一に伝統的でオーソドックス、そして生真面目なクルマである。そんなエクリプスクロスを見て、ああ、三菱車ってこんな感じだったなあ……と、数年ぶりに思ったのもまた事実である。

HONDA VEZEL HYBRID RS・Honda SENSING

「新世代のスペシャルティカー」としてグローバルで通用するモデルを目指し、2013年に誕生。扱いやすいボディサイズながら、ラゲッジルームや後席スペースの広さも特筆すべき点だ。※撮影車両は2018年2月発表のマイナーチェンジ前のモデル。

直列4気筒DOHC+モーター/1496㏄
最高出力:132㎰/6600rpm[モーター:29.5㎰]
最大トルク:15.9㎏m/4600rpm
[モーター:16.3㎏m] 
JC08モード燃費:25.6㎞/ℓ
車両本体価格:277万円