ルノー・メガーヌGTをフォルクスワーゲン・ゴルフGTIと徹底比較!「ライバル車比較インプレッション」

1000万円を超えるようなスーパースポーツは、確かに速い。とてつもなく速い。だが、際限なく速さだけを追い求めるよりも難しいことを、この2台は涼しい顔してやってのける。世界最量販カテゴリーをベースにし、快適性や経済性も最高レベルのものが求められ、そこに速さや官能性をも付加する。メガーヌGTとゴルフGTIの戦いは、スーパースポーツを超えた世界最高のショーである。

TEXT●大谷達也(OTANI Tatsuya)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

走る楽しさを追求したメガーヌに軍配か

 今回、比較テストの相手として連れ出したのは、Cセグメント・ホットハッチの定番中の定番であるフォルクスワーゲン・ゴルフGTI。根っからのフランス車好きからすれば「ちょっとタイプが違うんだけれど……」と思われるかもしれないが、ルノー・スポールの担当者自らが「ゴルフGTIはメガーヌGTの直接的な競合車」と名指しするくらいだから、ベンチマークとして登場してもらう価値は充分にあるはずだ。

 最初にスペック関連をおさらいしておくと、ボディサイズはメガーヌGTのほうがやや長く、幅広い。メガーヌGTはホイールベースでもゴルフGTIを上回るが、全高はゴルフGTIのほうが35㎜高い。この辺が、低くて伸びやかなプロポーションのメガーヌGTに対して、ゴルフGTIは背筋がシャンと伸びたアップライトなスタイリングに見える一因になっているようだ。

 エンジンが4気筒ターボであることは同じながら、排気量はメガーヌGTの1618㏄に対してゴルフGTIは1984㏄と400㏄近くも大きい。この点はエンジン・スペックに如実に反映されていて、最高出力はメガーヌGTの205㎰に対してゴルフGTIは230㎰と強力。さらに、最大トルクもメガーヌGTは280Nmで、一方のゴルフGTIは350Nmと明確な差がある。発生回転を見てもメガーヌGTのほうが高めで、ゴルフGTIはより低い領域から幅広い回転域でより大きなパワーとトルクを生み出す傾向が見られる。

 フロントサスペンションはどちらもマクファーソンストラット式で同じ。ただしリヤはゴルフGTIの4リンク式のほうがメガーヌGTのトーションビーム式より“ぜいたく”。その差を埋めるべくメガーヌGTに採用されたのが4輪操舵のコントロールだ。その詳細な説明は別のページに譲るが、4コントロールは低速域で機敏な反応を示すだけでなく高速域におけるスタビリティ改善にも効果がある。このクラスで電子制御式4輪操舵を採用したのは、おそらくメガーヌGTが世界初だろう。

〈ルノー・メガーヌGT〉4コントロールの効果は絶大!

GTの名を冠しつつも開発はルノー・スポールが行なっており、都会的で大人びたエクステリアからは想像もつかぬほど、攻めて遊べるハンドリングを持つ。とくに4コントロールと呼ばれる4輪操舵システムの効果は絶大で、高速域での安定感と低中速域での機敏性を高レベルで両立させた。トランスミッションは6速EDC(DCT)のみとなっている。

最高出力:205㎰
最大トルク:280Nm
車両価格:334万円

似ているようで、キャラクターはまったく異なる

 では実際に2台に試乗した印象はどうか。ゴルフGTIは先ごろ実施されたマイナーチェンジでサスペンション・ストロークの初期にしなやかに伸縮する領域を新設。乗り心地の改善を図るとともに、ハードコーナリング時の姿勢変化をいくぶん許す方向になり、これで操る楽しさを拡大したというのが私の解釈。もっとも、基本的には安定した弱アンダーステアで、よほど極端な扱いをしない限りテールが滑り出さない点は従来と変わらない。

 一方のメガーヌGTはフレンチホットハッチの文法どおりダンピングがドスッと効いた乗り味だが、低速域では路面の細かな凹凸を吸収しきれない領域もあって、そんなときには軽いゴツゴツ感が伝わる。これとは対照的に、ゴルフGTIは同様の状況でも例の「しなやかな領域」が活躍、路面からの振動を滑らかに吸収してくれる。このため走り出した直後の乗り心地はゴルフGTIのほうが好印象だった。

 エンジンの感触は排気量の差をそのまま反映しているようで、ゴルフGTIのほうが全域で力強く、ターボラグのようなものも感じられない。過給圧よりも排気量の大きさに頼った出力特性といった印象だ。

 これに比べると、メガーヌGTIはスロットルを全開にしてから発生トルクがピークに達するまでの間にわずかな遅れがある。つまり軽いターボラグが存在するわけだが、パワーが立ち上がっていく過程は滑らかな曲線でつながれているため、扱いにくさはない。一方、パワー感は回転数を上げれば上げるほど高まっていくようで、スポーツ・エンジンを操っているという実感はメガーヌGTのほうがより強く感じられた。

 つまり、タウンスピードの領域ではゴルフGTIのほうが扱い易くて洗練されているように思われたわけだが、ワインディングロードで飛ばし始めると印象は一転。メガーヌGTの走りが一気に輝き始め、ファン・トゥ・ドライブの面でゴルフGTIを大きく突き放したのである。

 まず、低速域のやや荒れたマナーが一変。信じられないほどメガーヌGTの足まわりは柔軟な反応を示し始め、それこそ路面に吸い付くかのような追従性を発揮。快適な乗り心地と圧倒的なロードホールディング性をもたらしてくれる。また、外乱による姿勢変化は巧妙に抑え込まれているのに、ドライバーが意図すればピッチングやローリングを引き出すのが比較的容易なうえ、そのプロセスがリアルタイムでフィードバックされるため、ドライバーは自信を持って操ることができる。

 さらに、適切なサスペンション・ジオメトリーがタイヤのグリップを余すことなく引き出す一方で、荷重移動によってほどよくステアリング特性が変化するセッティングに仕上げられているのだ。

 その結果は、ご想像のとおり。メガーヌGTは、スロットルワークやブレーキングでステアリング特性の微調整をしながら、思いどおりにコーナーを駆け抜けていける。もっとも、速度域が低ければアンダーステアや、ましてオーバーステアはほとんど認められないだろうし、いずれも唐突に発生するタイプではないから初心者にも安心。一方の中上級者はこの特性を積極的に活用することでスポーツドライビングの醍醐味を満喫できるはず。つまり、メガーヌGTにはドライバーのスキルに応じた幅広いファン・トゥ・ドライブが用意されているのである。

〈ゴルフGTI〉やっぱりコレがベンチマーク

初代から一貫してクラスのベンチマークとして君臨。現行七代目は2012年にデビューし(日本導入は13年)、この17年にマイナーチェンジを受けた。精悍さを増したエクステリア以上に走りの進化は著しく、依然としてライバルにとっては無視できない存在であり続けている。トランスミッションは6速DSG(DCT)のほか、6速MTもラインナップされる。

最高出力:230㎰
最大トルク:350Nm
車両価格:399万円

 対するゴルフGTIのコーナリングフォームは安定しきっているため、そのパフォーマンスをフルに引き出すのは比較的容易。ただし、前述した「しなやなか領域」を越える挙動変化を導き出すのは難しいので、ドライバーがステアリング特性をコントロールできる余地は狭く、中上級者は手詰まり感を覚えるかもしれない。裏を返せばゴルフGTIは万人向けで、「誰でも同じように速く走れるホットハッチ」といえるだろう。

 ここまでお付き合いいただいた皆さんはすでにお気づきのように、メガーヌTGとゴルフGTIのキャラクターはよく似ているようでいて、その目指す先は大きく異なっている。幅広い領域で優れた快適性をもたらし、誰にでも操りやすいハンドリングを目指したゴルフGTIに対して、メガーヌGTはドライビングスキルに応じた奥深いハンドリングの世界を有している。しかも、当初は洗練されていないと感じられた低速域での乗り心地も、ひとたびワインディングロードを走った後では不思議と滑らかに感じられ、快適性に対する印象は大きく変わった。したがって、取材した時点ではメガーヌGTの走り込みが不充分だった可能性も考えられる。

 では、ゴルフGTIとメガーヌGTのどちらがいいのか? 本稿では言及できなかったが、ゴルフGTIは内外装のクォリティの高さや充実した運転支援装置といった様々な魅力を備えているものの、個人的には走る楽しさを徹底的に追求したメガーヌGTに軍配を上げたい。50万円を超す価格差も、この判断を正当化してくれるはずだ。