【新車試乗 ポルシェ911(992)】フルモデルチェンジで991から992となった八代目ポルシェ911は「MMBアーキテクチャー」でどう変わった?

■SUV人気に押されてる!? イヤイヤ、やっぱ「ポルシェ」は「911」推しでしょ!

・「販売の8割以上が4ドア物件」というポルシェの中で911の立ち位置は?

SUVはカイエンにマカン。そしてサルーンはパナメーラ。今や多くの国で売れてるポルシェとは4ドアのクルマであり、多くの人はそれをもってポルシェをスポーツブランドとみなしているのかもしれません。現に世界最大市場の中国においては、販売の8割以上が4ドア物件だといいます。

が、その中国でもにわかに数を増やしつつあるのが2ドアのスポーツカーライン、とりわけ911のようです。これは上海に広大な体験コースを作るなど、ポルシェ自ら2ドア推しでブランドイメージを醸成してきた成果もあるようですが、一方で彼の地も市場の成熟化に伴い、本質を求めるカスタマーが増えたことは想像に難くありません。

ポルシェの本質は911。これはもう揺るぎない事実です。いや、もっといえば核心でも、御神体としても大袈裟ではないでしょう。

じゃあボクスターやケイマンはどうなのよと問われればこれは難しい。この両車はアーキテクチャーをある程度共用してますし、リアサスがストラットとはいえミッドシップパッケージを採るボクスター&ケイマンの方が運動性能的に優位に立つ場面もあったりします。が、ポルシェ自らが判断する性能のプライオリティは911の側にあり、動的質感においても911に利があると。これは10年以上ボクスター&ケイマンに乗り続ける僕も悔しいかな、試乗のたびにはっきりと体感することです。

その911がフルモデルチェンジを受けて992型へと進化しました。水冷世代では四代目、63年のデビュー時から数えれば八代目ということになります。

・ポルシェ911、「991」→「992」でどこが変わった?

外観的には下部がブラックアウトされた前後のバンパーによってキュッと引き締まった印象です。内装は空冷時代の意匠をオマージュしたセンターコンソールの5ボタンや、タコメーター以外を液晶化した5眼メーターなど伝統的なディテールも散見されますが、スイッチやノブ類をフラッシュサーフェス化したようなフラットデザインが未来性を匂わせます。ともあれ全体的なデザインテイストはカイエンやパナメーラとも相通じており、ポルシェ内で共有する未来像に則ったものといえるでしょう。

でもホイールベースは991型と変わらず。エンジンの排気量も991型後期と変わらず…と、肝心の中身はあんまり代わり映えがなさそうにみえなくもありません。

でも実際は色々と手を尽くしているんですね。シャシーはアルミ材の使用率を70%まで高め、これに伴いリアメンバーは一新されエンジンマウントは位置も搭載方法も変更。ホワイトボディ全体では前型比で12kgの軽量化と5%の剛性向上を果たしたといいます。

・ポルシェが呼ぶ「MMBアーキテクチャー」とは?

ちなみにこの992型からポルシェは911系のアーキテクチャーを「MMB」と呼ぶようになりました。これ、意味的にはミッドシップ用のアーキテクチャーとなりまして、MQBやMLBといったVWグループのモジュールコードに則ったものと思われます。かねてから911には同門のボクスター&ケイマンだけではなく、アウディR8やランボルギーニウラカンといったグループ内のミッドシップモデルともアーキテクチャーを共有するという噂がありますが、このコードを使用するということはやはり…と、想像を膨らませてしまいます。

シャシーの進化に伴い、これまでRRと四駆とでトレッドを違えていたカレラ系のディメンジョンは一本化。四駆側に用意されていたワイドボディをベースにフロント側のトレッドを拡大、カレラS&4Sではタイヤが20/21インチの異径設定となるなど、足周りのセットアップも大幅に変更されました。そしてエンジンの側も3Lフラット6ツインターボはキャパシティはそのままに、新たな冷却レイアウトの採用やタービンの大径化、インジェクターの精細化などで991後期型比で30psのパワーアップを果たしました。ミッションはPDKが7速から8速へと進化、MTは現状用意がありませんが、カレラの発表時には設定されるのではとみられています。

ちなみに最高速はカレラSで308km/h、0-100km/h加速はオプションの有無により若干異なりますが3.5〜3.7秒と、スポーツカー水準に照らしてもトップクラスであることに間違いはありません。前型でさえニュルを7分40秒なにがしで走る実力の持ち主だったことを鑑みれば、7分20〜30秒台は確実にマークすることでしょう。

と、RRでそんな性能を引き出せるのはごく一部のレーサーさんだけでしょうと、ここで一部の皆さんはお思いになるかもしれません。が、911は初代から一貫して、スポーツカーの性能を有しながら快適で実用性の高いクルマであることを目指してきました。それゆえ四駆化や2ペダル化に積極的だったり、PSMなどの電子デバイスをいち早く採用したりしてきたわけです。

・PSM、トラクションコントロール、誰にでも楽しめる911

992型では新たに後輪操舵の採用で旋回性や応答のダイレクト感を高めつつ、一方で降雨時などのスタビリティを高めるウェットモードを設定しました。PSMやトラクションコントロール、スロットル&変速マネージメントを統合制御し、不安定挙動への移行を阻止するというそれ、雨天時はホイールハウス内に仕込まれたセンサーでスプラッシュ音を拾い路面状況を察知、モード使用を促すという念の入りようです。実際に散水した路面で試乗しましたが、いかにもお尻からズパッと流れそうな911の不得手状況では相当強力に車体を安定させてくれます。こうやって長所を伸ばしつつ短所を削るという作業を半世紀以上に渡って続けてきた、モデル毎にその成果が地道に反映されているんですね。

911の進化は、周囲を固めるサプライヤーにも大きな課題を突きつけることもあります。後輪より後ろに置かれたエンジンで発する破天荒なパワーを御するにはタイヤの大径・低偏平化は必須。とあらばその径を活かしてディスクを大型化、そしてキャリパーのモノブロック化を進めるなど、特に911を通じてのタイヤとブレーキの連携的進化は、他のメーカーのスポーツカー作りにも大きな影響を与えました。

00年代以降は電子制御技術の発達もあって大パワーも随分お気楽なものになってしまいましたが、真のスポーツカーメイクスたちは、RRという特殊なパッケージで半世紀以上にわたって進化し続ける911というクルマに格別の敬意を抱いています。そして彼らは、乗り心地と運動性能、そして速さのバランスが疑いなく世界一の水準に達した992型をまたお手本として、一喜一憂を繰り広げるのでしょう。

(渡辺 敏史)

【SPECIFICATION】
<ポルシェ911カレラS>
ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1589 後1557mm
車両重量:1515kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91.0×76.4mm
圧縮比:10.2
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm/2300 – 5000rpm
トランスミッション:8速DCT(PDK)
駆動方式:RWD
ステアリング形式:電動パワーアシスト
(オプション:リアアクスルステアリング)
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後マルチリンク
ブレーキシステム:前6ピストン 後4ピストン(アルミモノブロック)
ディスク径:前350×34 後350×28mm
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J)後305/30ZR21(11.5J)
最高速度:308km/h
0-100km/h加速:3.7(3.5)秒
0–160km/h加速:8.1(7.8)秒
0–200km/h加速:12.4(12.1)秒
※( )内はスポーツプラスモード時
CO2排出量(EU):205g/km
燃料消費率(EU複合):8.9L/100km

<ポルシェ911カレラ4S>
ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1589 後1557mm
車両重量:1565kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91.0×76.4mm
圧縮比:10.2
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm/2300 – 5000rpm
トランスミッション:8速DCT(PDK)
駆動方式:AWD
ステアリング形式:電動パワーアシスト
(オプション:リアアクスルステアリング)
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後マルチリンク
ブレーキシステム:前6ピストン 後4ピストン(アルミモノブロック)
ディスク径:前350×34 後350×28mm
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J)後305/30ZR21(11.5J)
最高速度:306km/h
0–100km/h加速:3.6(3.4)秒
0–160km/h加速:8.3(8.0)秒
0–200km/h加速:12.7(12.4)秒
※( )内はスポーツプラスモード時
CO2排出量(EU):206g/km
燃料消費率(EU複合):9.0L/100km