総帥の操り人形とみなされてしまったチーム代表【F1コラム 今フェラーリに、何が起きているのか/前編】

 フェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表が更迭され、テクニカル・ディレクターのマッティア・ビノットが後任に就いた。そうなるのではという観測はすでに2018年の夏、フィアットグループの総帥セルジオ・マルキオンネが急死して以来、囁かれてきたことだった。

セルジオ・マルキオンネ(左)、マウリツィオ・アリバベーネ(右)
セルジオ・マルキオンネ(左)、マウリツィオ・アリバベーネ(右)

 そもそもフェラーリのメインスポンサー、フィリップ・モリスのマーケティング責任者に過ぎなかったアリバベーネをチーム代表に抜擢したこと自体、大きな判断ミスだったのではないだろうか。2008年にジャン・トッドがフェラーリを離れて以来、チーム代表の交替は今回で4回目となる。

 ステファノ・ドメニカリ時代には、2010年と12年にタイトル獲得目前まで行ったが、目標不達成の責任を問われて2014年4月に辞任。しかし、ドメニカリの後任となったマルコ・マティアッティはまったくレース経験がなく、一年も持たなかった。

 それに比べればアリバベーネは、F1の世界はよく知っている。しかしフェラーリのリーダーにふさわしいカリスマをもっていなかった。

 アリバベーネを抜擢したのは、マルキオンネだった。FIAとのパイプも太く、2当時F1のCEOだったバーニー・エクレストンとも良好な関係にあることが評価されたからだ。しかし就任後はチーム内で、マルキオンネを指示を伝えるだけの操り人形と見なされるようになった。対外的には英語もまともに喋れず、途中から記者会見も開かなくなった。

 当時のフェラーリは、開発部門の立て直しが急務だった。その要となるべき人材で、ルノーから引き抜いたばかりのジェームズ・アリソンを、マルキオンネは早々に更迭してしまう。この人事には、チーム内にはセバスチャン・ベッテルを始め反対する者も多かったが、アリバベーネはマルキオンネの意見に従うだけだった。

 後任のビノットは20年来フェラーリに在籍する、たたき上げのエンジニアだ。技術者としての評価は決して低くなく、それ以上に控えめな外見からは想像もできないほど、強烈な野心家でもある。そのためテクニカル・ディレクターに就任後は、フェラーリの将来に対する明確なビジョンを持てないアリバベーネと、深刻な衝突を繰り返すようになっていく。

(後編に続く)