【初試乗】新型「トヨタ スープラ」サーキット試乗! BMW Z4との違いを島下泰久氏がレポートする。

【初試乗】新型「トヨタ スープラ」サーキット試乗! BMW Z4との違いを島下泰久氏がレポートする。

TOYOTA Supra Prototype

トヨタ スープラ プロトタイプ

サーキットだから分かる新型「スープラ」の本質。

先行して海外メディアによる試乗記や動画が出回っていたから、きっと気にしていた人はすでにそれらを目にしているだろう。日本のプレスだけが国際試乗会に参加できず、発信もお預けとなっていた新型「トヨタ スープラ プロトタイプ」、ようやく試乗が叶った。

舞台はお馴染み袖ヶ浦フォレストレースウェイ。車両はまだ開発最終段階のもので、まだナンバーはついておらず、内外装には厳重な艤装が施されていた。詳細なスペックについても発表は無し。プレゼンで使われた画像、映像の撮影すら許されなかったが、そもそも発売前の車両をサーキットで試させてくれるなんて、かつてのトヨタでは想像できなかったことである。不満などあるはずが無い。

しかも筆者は、車体の基本設計を共有する新型BMW Z4の試乗を、すでに済ませている。走りの感触だけでなくメカニズムについても取材済みだから、両車の共通点と相違点、何よりその真価を誰より突っ込んだレベルで、お伝えできるはず・・・と意気込んでいたら、走行はわずか20分だけで、しかもコースは朝方まで降っていた雨でまだ濡れていた。徐々に乾きつつあるとはいえ、ここは慎重に行くしかない。

インテリアは、あくまでもトヨタ流。

走り出す前に最低限の機能確認をしておく。厳重にカバーされたインテリアはZ4とはまったくの別物で、ステアリングホイールもデジタルメーターパネルも意匠は異なるし、NORMALとSPORTの走行モード、ON/TRACTION(介入が抑制される)/OFFの3段階となるVSCの設定なども、あくまでトヨタの流儀である。右ハンドルでもウインカーレバーはステアリングコラム左側に付いていたが、これは単に仕向地によるものだろう。

BMWと共通なのは、基本骨格とパワートレイン。

予め記しておくと、スープラとZ4は基本骨格を共有するが、それはZ4をクローズドにしただけという意味ではない。理想のダイナミック性能を追求して車体寸法やエンジン搭載位置などを決定するまでは、トヨタとBMWが共同で行ない、それ以降の開発は各々が別々に行なったのがスープラとZ4である。両社が共同で骨格を作り、パワートレインやシャシーの多くのコンポーネンツはBMWのものを使い、ともにオーストリアのマグナ・シュタイアーにて生産される。

クローズドボディゆえにZ4よりも一枚上手の剛性感。

このスープラでコースに出て、まず感心させられたのがクルマ全体の剛性感の高さだ。フロア、サスペンションの取り付け部分などあらゆる部分がガチッとしている。縁石を飛び越え着地した時のような鋭い入力も一発で受け止め、何事も無かったかのように減衰してしまうのはZ4も似たところがあるが、スープラはクローズドということで更に一枚上手という印象だ。

手応えは軽いが芯は出ているステアフィール。

シートの出来も良く、サーキットでも身体をしっかりとホールドしてくれる。Z4より手応えの軽いステアリングはトヨタらしいフレンドリーさに繋がっているが、きちんと芯は出ているから、決してナマクラなわけではない。これらも含めて、クルマ全体がひとつのカタマリであるかのような剛体感が醸し出されているのに、これは本物だぞと気分が昂ぶってくる。

直6ターボはZ4と共通の340ps&500Nm!

エンジンは直列6気筒3.0リッターターボ。共用するZ4 M40iでは最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生するユニットだ。排気系などが異なるというスープラのスペックは明かされていないが、大きく異なることはないだろう。

このエンジン、さすがストレート6らしく滑らかに吹け上がるだけでなく、全域でトルクがフラットで、いつどこからでも欲しいだけの力をすぐに引き出せる。トランスミッションは8速トルコンATだが、ZF製のそれはレスポンスもダイレクト感も不満を感じさせることはなく、切れ味の良いコントロール性を実現していた。

7000rpmまで使い切れる直6エンジン!

レヴリミットは7000rpmからだが、最後の200〜300rpmではやや伸びが鈍る。そのためDレンジではその手前でシフトアップしてしまうが、シフトパドルを使ってのマニュアル変速なら7000rpmまでしっかり使い切れる。各ギアで7000rpmまで回すと、2速で85km/h、3速で131km/h、4速で161km/h辺りまで到達する。このギア比も、Z4 M40iと共通である。今回の試乗ではメインストレート終盤で5速に入り、1コーナー手前で177km/hまでは確認したから、動力性能は上々と言えるだろう。また、ブレーキも秀逸。効きも十分だが何よりタッチが素晴らしい。

Z4より挙動は掴みやすい。

しかしながらそれよりも感心、感動させられたのはシャシー性能である。ステアリングレスポンスはきわめて正確で、切り込んだ瞬間からノーズがインに引き込まれる、いやクルマ全体が旋回状態に入っていく。ステアリングの手応えが重めで、且つノーズが平行移動するかのようにインに切れ込むZ4と較べると、操舵感が軽めで、且つほんのわずかにロールを伴うスープラの方が挙動が掴みやすい。

ホイールベースは86より短い。

こうして曲がりだしてしまえば、あとは素晴らしいニュートラルステアのコーナリングが待っている。ホイールベースはトヨタ86よりも短い2470mmしかなく、前後重量配分はほぼ50:50、しかも重心もやはり86より低くなっているというだけあって、まだハーフウェットの路面に、まるでベタッと貼りついたような安定感でグイグイと曲がっていくのだから痛快だ。

コントロール性は悪くないが・・・。

但し、立ち上がりではそれなりに神経を使った。なまじトルクが太いこともあり、VSCをTRACTIONにしていても尚、踏んだ瞬間にリアが弾かれるようにスライドしてしまうのだ。瞬間的なカウンターステアが必要なのは結構シビレる。救いは滑り出しこそ唐突でも、その先のコントロール性は悪くないことで、前輪のグリップ感が終始失われることがないのもあって、そのつもりで身構えておけば十分に対処はできる。

それだけにVSCは、あるいは滑った途端に大きめに介入してギクシャクしてしまったTRACTIONモードより、いっそオフの方がハーフウェットの今回の路面ではよかったかもしれない。

電子制御LSDのセットアップが鍵?

とは言いつつも、やはりもう少し平均台の幅が広い方がいいと感じたのも事実である。ちなみにタイヤはZ4と同じ、そしてM3とも共通だというBMWスペックの星マーク付きミシュラン パイロットスーパースポーツ。もしかするとリプレイス用よりドライ路面寄りの味付けなのかとも思ったが、M3ではウェット操縦性もそこまでシビアではなかったと考えると、たとえば電子制御LSDのセットアップ辺りに、まだ改善の余地があるのかもしれない。

Z4よりフレンドリーで楽しめる。

コースが徐々に乾いてくると、印象は更に良くなってきた。リアの滑り出しに唐突さが無くなり、またスライドしながらもしっかりクルマが前に進んでくれるようになってきたのだ。実は別の機会に完全ドライの路面でも試したのだが、ステアリングとアクセルの連携でもう少し角度をつけたり、あるいはじわりとクルマを前に進めたりというコントロールが、とてもやりやすい。Z4より断然、フレンドリーで楽しめる操縦性には、思わず小躍りしてしまった。

A80型スープラをも彷彿とさせる!?

ドライ路面でのこの扱いやすさは、先代A80型スープラをも彷彿とさせるものと言ってもいいだけに、願わくばウェット路面でのコントロール性も、このレベルまで引き上げてほしい。その辺りはまだ不満として残ったが、そもそも今回の試乗車はまだ最終スペックではなく、まだまだ改良が入れられるということだから、それを楽しみにすることとしたい。

正式デビューは、1月14日のデトロイト。

ちなみにこの新型スープラ、現在に至る開発中の走り込みは90%以上を一般道で行なったという。それだけに、本質を知るにはサーキットだけでは足りないというもの。次の機会には是非、ストリートでその走りを確かめてみたいと思う。

ともあれ、第一印象は期待以上だった新型スープラ プロトタイプ。1月14日、NAIAS(北米国際自動車ショー)にて正式デビューの予定だ。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)