【COLUMN】「松下信治、F1への道再び」。2019年、F2のトップチーム、カーリンより参戦。

2度目のF2参戦。

11月29日から12月1日、F1アブダビGP終了後のヤス・マリーナ・サーキットにて開催されたF2合同テストに、松下信治選手が参加した。2019年シーズンをともに戦うイギリスのチーム、カーリンのマシンを駆り3日間のテストを敢行したのである。

F1直下のカテゴリーであるF2に、ホンダは2018年には牧野任祐、福住仁嶺の2名に参戦させたが、2019年には松下選手だけを送り込む方針とされる。松下選手にとっては、実はこれは2度目のF2参戦となる。

松下選手は2014年に全日本F3選手権のチャンピオンを獲得したあと、2015年から当時のGP2選手権に参戦。途中、F2と名称が変わったこのレースに3年間フル参戦し、合計3回の優勝を達成するも、2018年には国内のスーパーフォーミュラへと戦いの舞台を移していた。ヨーロッパでの3年間のシリーズランキングは9位、11位、6位で、F1ドライバーになるために必要なスーパーライセンスを取得できるだけの結果を残すことができなかったからだ。

確かにスーパーフォーミュラでも初年度でチャンピオンを獲れれば、スーパーライセンス申請に必要なポイントを満たせる。しかし同じマシン、同じサーキットで毎年戦っているドライバーに混じって、初年度からそれだけの結果を出すことが難しいのは、F1経験者の小林可夢偉選手でも未だ勝利を挙げられていないことなどから容易に想像できる。つまり、F1への道は実質的に絶たれたと多くの人は思ったに違いないが、本人はまったくそうは思っていなかった。

F1への道を実現させるために、F2参戦をホンダに直訴。

開幕してすぐ、F1に行くためにはヨーロッパで戦うほかないと確信した松下選手は自力で支援者を集めて行動を開始。8月末のベルギーGPの際にF2のパドックを訪問して様々なチーム、関係者とコンタクトを取る。そして某トップチームとのテストの話をまとめ、それを根拠にホンダに再度、F2参戦を直訴する。また同時に、2億円以上とも言われる参戦資金を集めるため、スポンサー活動も開始するのだ。もしホンダが手を貸してくれなくてもF2に乗れるように、である。

こうした行動に、率直に言って当初あまり乗り気とは感じられなかったホンダも次第に考えを変えていき、遂に松下選手のF2再挑戦は実現した。これが異例中の異例であることは言うまでもないだろう。

F2のトップチーム「カーリン」から参戦。

所属するカーリンは、2019年にマクラーレンからF1デビューするランド・ノリス選手がランキング2位になり、チームとしては1位を獲得したF2のトップチーム。実は当初テストの話をしていたのは別のチームなのだが、こうして話がまとまったのは、つまり松下選手の実力をF2関係者の誰もが認めていたことに他ならない。実は松下選手がカーリンで知っていたのは1人だけ。他の多くのメンバーとは、今回のアブダビで初めて顔を合わせたというが、初顔合わせは上々の滑り出しだったようだ。

「チームはとてもいい雰囲気で迎えてくれましたし、テストは出だしから良い感じで行けました。一発のタイムはまだ詰める余地がありますが、重視していたレースシミュレーションはかなり良くて、チームメイトよりいいタイムを出せました」

もちろん、チームの雰囲気が良かったのは、単に人柄がいいという話ではなく、松下選手が最初から落ち着いて、確実な仕事をこなしていたからだろう。

速いのはレーシングドライバーとしては当たり前。その上で求められるのは、チームといかに良い仕事をしていくか、パドックでの立ち居振る舞いはどうかなど、ドライバーとして、あるいは人間としての総合力である。認められたのは、そこ。そもそもこのF2再挑戦自体も、やはり同様の話であるはずだ。

新型マシンで初テスト。不安な要素は一切無し。

2018年より導入された新型マシンでの初テストとなった今回。実は3日間のテストの最終日ではトップタイムを狙って、フレッシュタイヤも1セット残していたという。それは叶わなかったが本人は心配はしていない。

「最後の最後の詰めの部分では、今年1年走っていたドライバーに及ばないところがありますが、なんとかできる範囲の差でしか無いです。自分についてくれるエンジニアはイタリア人なんですが、すごく細かくやってくれるし、チーフエンジニアは2台のマシンを平等に見て、いいアドバイスをくれる。事前にしっかり準備をしたい自分には合っているなと思います。チームには不安な要素はまったく無いです。これから何回かテストがあるので、細かい詰めを自分で徹底していけば行けると思います」

テスト後、松下選手はヨーロッパに残り2019年からの住居を決めて帰ってきた。ビザが下り次第、再びヨーロッパに向かう予定だ。

2017年のF2ランキング6位により現在、スーパーライセンスポイントを10点持っている松下選手は、2019年のF2でランキング4位に入り30点を加算すれば、合計40点でその申請資格を得る。しかしこれはあくまで最低ライン。誰をも納得させる、ひとつでも上の順位でフィニッシュしてF1への扉を切り拓いてほしい。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/本田技研工業