【TOPIC】2019年版『間違いだらけのクルマ選び』発売中。著者 島下泰久氏の想いとは。

『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』はじめに

愛が足りない。そう思うのだ。もちろん、クルマについての話である。

とりわけ経済メディアの自動車に関する記事を見ていると、そう感じて胸が苦しくなる。たとえば「電気自動車の時代になれば、パーツを組み合わせれば自動車はすぐに出来る」なんて言葉に、あるいは「カーシェアリングの普及が進めば、現状の自動車のビジネスモデルには先はない」でも何でもいい。こうした言葉に、クルマへの愛情は込められているだろうか。今、クルマの開発に勤しんでいる人たち、丹精込めて生産している人たちへのリスペクトが、そこにあるようには私には聞こえない。もちろん、それを所有すること、眺めること、運転することや誰かを乗せることに対しての、何らかの思いについても同様である。

あるいは工業製品としての自動車、商品としての自動車、その経済効率性については語れているのかもしれないが、少なくともそこには、百何十年にも渡って幾多の人々が、各々のかたちで愛情を注ぎ、故にここまで存在してきたクルマというものの本質については、何も語られていないと言っていいと思う。クルマの話じゃない。あくまで自動車の、産業の話に終わっている。そもそも、何か記者発表があればタクシーで現れ、話者の顔すら見ずに聞いた話をそのままPCに打ち込み、見出しのことだけ考えた質問を繰り返す彼らは、クルマやそれにまつわるあれこれへの愛情、少しでも持ち合わせているのだろうか。

愛を持ってクルマを語らなければ、そんな世の中でクルマの本を出す意味はない。そんな思いから内容を練り上げ、今回は巻頭にまさにこれぞ自動車メーカー、トヨタの特集を持ってきた。指摘されるまでもなく強い危機意識を持ち、これまでに無いスピード感で走り出した最近のトヨタだが、まだ未来に対する確固たる答を持っているわけではなく、それゆえにまだ提案、チャレンジをし続けているのが現状だ。しかしながら「I Love Cars!」とストレートな、一人称のメッセージを叫ぶトヨタである。その今を記しておくことは、意味があると考えたのだ。

しかし、愛が足りないのは、何もクルマを取り巻く周辺のことだけではないのかもしれない。実際、今年も偽装だ改ざんだという憤りたくなるようなニュースが、自動車業界からまさに噴出した。もしかすると、もっともクルマへの愛が足りないのは自動車業界そのものじゃないか。そう嘆きたくなる事態と言える。

これら一連の問題については、原因はそもそもの時代に合わない制度で、クルマに罪はないなどという論調も目にする。しかし、制度が悪いならば、真正面からそれを変えるべく動けばいいのであり、それをせずに偽装したり改ざんしたりしていたということは、他の領域でも同じようなことをしているんじゃないかと疑わせはしないだろうか。もし、自分にとって明るくない業種で、偽装や改ざんが頻発したら、少なくとも私はそういう風に捉えるだろう。

愛車という言葉のように「愛」をつけて語られる工業製品は、クルマ以外に無いと言われる。私としてはその愛が、自ら所有する特定の1台に対してだけに留まらず、クルマそのもの、クルマを取り巻くすべてに対するものであればと願ってやまない。その時こそクルマは単なる工業製品ではなく、ひとつの文化たり得るのでは?

トヨタのような会社が愛を叫ぶならば、それこそクルマを売るだけでなく、こうした文化を牽引していくという気概があってほしい。そして、もちろん文化には担い手が必要である。こんな時代に、この本を手にとってくださった方は、きっとすでにそういう感性をお持ちなのだと確信しているが、あるいはこの本がその理解が深まる一助になるようならば悦ばしい限りである。

2018年11月

【PROFILE】

島下泰久(しました・やすひさ)

1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動。2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。一時休刊していた年度版『間違いだらけのクルマ選び』を、2011年の復活から徳大寺有恒氏とともに、『2016年版』からは単独で執筆する。自動運転技術、電動モビリティを専門的に扱うサイト「サステナ(http://sustaina.me)」を主宰。

『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』

島下泰久著
256ページ・四六判・並製
定価(本体1,400円)+税
発売日:2018年12月14日
出版:草思社

「AI にコネクテッド、自動運転にシェアリング? クルマの未来はどうなる?」

トヨタがソフトバンクと提携、クルマのあり方がいよいよ変わりはじめるのか?
一方、市場では新型SUVが驚くほどの大量新登場、ユーザーの所有欲を刺激する。
クルマそのものからも、業界動向からも、目が離せない!

第1特集:トヨタはクルマをどう変えるか

矢継ぎ早の提携の意味、コネクテッドの正体とは。そしてなにより、ニューカーの出来は?

第2特集:SUV大豊作! 選ぶべき1台は?

内外のメーカーから大量デビューしたSUVのニューカー、15車種を一気批評!

2019年版の指摘

・トヨタの変革が加速。一体何が起こっているのか?
・プレミアムEV戦争がいよいよ本格化する
・カーシェアはクルマ業界にとって実はチャンスだ
・デジタルミラーは本当に便利で安全なのか?
・なぜ国産PEHVは海外勢より優れているのか?
・速報! テスラ・モデル3が日本で発表!

車種評より

フォレスター:ユーザー思いの改良がそこここに
カローラ・スポーツ:劇的な若返り。いや、これが本来のカローラか
レクサスES:プレミアムと言うには、走りも個性ももう少し・・・
メルセデスベンツAクラス:AI・走り・安全装備で頭抜けた存在。参った
クロスビー:軽量化優先で走りが△。ハスラーの方が良いか
クラリティPHEV:すべてにおいて魅力的だが、値段が…
エクリプスクロス:広くて走り良く4WDは絶品。超お買い得!
セレナ:e-POWERで走りまで生まれ変わった!
CX-3:大改良断行。だが納得しかねる部分も多い
ジムニー:品薄になるほどの人気も納得の本物

【リンク】

草思社 『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』

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